HIV感染を知り、離婚の後、最近になって子ども二人と共にスラムに移り住んできたルーシー。近所のキオスクのおばあちゃん一家に、本当の家族のように受け入れてもらっている。5歳の息子マイケルを預け、洗濯の仕事をするため高級住宅街に向かう。見事な手さばきで次々と洗濯を片づけていくルーシー。すっきりと晴れた空をバックに、洗濯物がゆったりと揺れる。仕事を終えてスラムに戻ると、真っ先にマイケルの所へ。今度は、泥んこになったマイケルをごしごしと容赦なく洗う。必死になって目をつぶる泡だらけのマイケル。夕方には10歳のエリザベスも帰宅し、親子で英語の宿題の時間。「よく見てごらんなさい。これは "逮捕" よ」「逮捕」。ストリートの子どもたちにも、昔、こんな幸せな時間があったのだろうか。

夜、ガレージ地区の路地裏。借りてきたペンキ缶を使って特製ピラフを作る子どもたち。「おい慌てるな!」「こんなウマい料理、ディセンバー・ホテルでも食べられないよ」「トマト40個だもんな」。それぞれに人に言えない弱みや事情を持つ彼らが、ストリートで仲間と出会い、協力し合い、自らの力で獲得した「解放区」。突然、リチャードがピラフを入れたバケツを奪おうとした。一瞬、緊張した空気が流れるが、なぜかみんな笑顔だ。じゃれ合いが時に本気の喧嘩になりかけるが、すぐに誰かが間に入り、その場を収める。すると、どこからともなく、さっきまで鍋として使っていたペンキ缶を叩く音が聞こえはじめる。


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