新潟日報 2008年9月9日朝刊/越智敏夫(新潟国際情報大学教授)

はじめての海外旅行はケニアだった。バブル経済初期、軽薄な大学三年生だった私はまわりの友人たちがヨーロッパとアメリカばかりに行くのが気にくわず、「だったら自分がほかのところに行くしかない」という無根拠な思い込みで飛行機に乗った。着いてみたら予想外のことばかりだった。想像していた「アフリカ」がないのである。これは考えてみれば当然のことで、こっちが勝手に像をえがいていても、そのとおりの現実がむこうにあるはずがない。高層ビルがそびえたつナイロビ市街を歩きながら、むしろこの落差こそ旅行の醍醐味なのだと自分を納得させようとした記憶がある。


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