その小林監督が、ウガンダ以来の友人であり、ケニアの現地NGO「モヨ・チルドレン・センター」を主宰している松下照美さんの協力を得て、首都ナイロビから北東に少し離れたティカという街の路上で生活をする子どもたちを撮り終えてきた。

冒頭、一人の少年が小川に向かい、服を脱ぎ水浴びをする。少年の輝く黒い肌。そして青空。写真集「トゥスビラ――希望」を思い出させる美しい映像だ。しかし映像はすぐ、子どもたちの日常を映し出す。物乞いをする少年。空き缶やプラスチック容器を集め、それを売ることで幾ばくかの金を手にする少年たちのグループ。ストリートチルドレンと呼ばれる子どもたちをテーマとしたドキュメントでは定番の映像だ。しかし小林監督の視線は、そうしたステレオタイプ化された映像を追い続けはしない。

映画は何人もの子どもたちの実家へと戻る様子を繰り返し映し出す。「モヨ」の松下さんも子どもに付き添っている。もちろん子どもたちが帰る家の状況も様々だ。それでも共通したものがある。親たちは「なぜ家を出て路上にいくのかわからない」「虐待などしたことはない」「なぜ?」「なぜ?」。その言葉だけが繰言のように語られる。親が同じ言葉を喋りまくるとき、カメラは子どもの表情をしっかりととらえる。いっさいの感情をなくし、無表情なままのその顔を。そして何度も子どもたちに付き添い、結局はすぐに路上に戻るという同じ結果を見続けている松下さんの表情。


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