航海・採集日誌

◎11月18日 航海日誌 4日目
杉村



薄明


「かいれい」上空は少々雲が多く、遠くの雲の間から太陽の光が差し込むような天気でした。

本日の潜航地点は、南西諸島沖の水深 5,000mの海底です。
着底までは約 3時間を要するため、これまでより 1時間前倒しでの準備です。
AM 5:30に居室のベットから出て、えのすいの作業着に着替えて”かいこう”のあるデッキに、6時前には降りていきました。
既に運航チームのみなさんは、準備を始めていました。
デッキから外を見ると、遠くの空がうっすら白く見えました。
これが、夜明け前の薄明(はくめい・はくみょう)というやつですね。
沖縄の朝は、寒くもなく暑くもなく爽やかでした。

さあ、深海 5,000mに向けて!

“かいこう“が目指す 5,000mへは簡単には行けない世界です。
何が簡単ではないか・・・
「水圧」という単語がみなさんの頭の中には、最初に想い浮かびそうですが、実際には「海水」そのものの存在が簡単ではないんです。
「水圧」は、その圧力に負けない素材や構造のものを作れば克服することは出来ます。※当然、これはこれで、簡単ではないのですが・・・ 。
それよりやっかいなのは、海の中では電波が使えないことです。
我々は、日常ごく普通に何の疑いもなく、携帯電話や車のナビシステムを使っていますよね。
海の中では、その携帯電話やナビシステムが使えない・・・
つまり、“電波”が使えないということです。
では、海の中での通信手段はというと・・・ “音波”を使います。
※最近では光などを使った新しい通信方法も開発されていますが、その多くはまだ開発段階です。
現在の日本の技術では、音波で位置情報や音声・画像までも送ることができ、しんかい6500では実際に使われています。
・・・えのすいで展示している「しんかい2000」も音波で通信していました・・・
音波での通信は深くなればなるほど、通信のタイムラグが長くなり、探査船などから送られてくる位置情報にはズレが生じやすく、位置を正確に把握することが難しくなってくるそうです。
コンピューターも、それを考える人も進歩しますが、それでもまだまだ壁はあるようなのです。

なぜ? このような話をしたかというと・・・
実は本日の潜航、最終的に目的の海底に辿り着く事が出来なかったのです。
海水の壁は、思った以上に高かったのです。
今回のような水深ではなおさらなのでしょう。
5,000mもの深さになると、海況や海流の影響を受け、さらに水深による位置情報の乱れやズレが大きかったようでした。
何も無い海底では、位置情報だけが頼りですから・・・。
実際に計器を観ているとビークルの表示位置があっちこっちにバラバラに表示されていました。

本当に「深海」は、宇宙に行くより難しい!!

5,000mの世界は、昨日の 2,000mよりさらに静寂の世界でした。
“かいこう”が航行する間、モニターに映し出される泥と泥岩で覆われた海底に目を凝らしていましたが、ユメナマコと思われるナマコの仲間が 1〜2個体と、小型のクシクラゲの仲間を 2〜3個体、魚類?と思われる生物をぽつりと見たくらいでした。
マリンスノーは非常に少なかったです。
昔の人たちが、「深海に生物が存在しない」と言った理由が、何となく分かるような気がしました。
一昨日の熱水噴出域の生物の豊富さが嘘のようにさえ感じました。


5,000mの海底


研究者のみなさんは、水深 5,000mの泥や海水を採取して泥の中の小さな生物や微生物を調べられていました。
どんな生き物がいるのか、これも楽しみです。

今日は、深海調査の厳しさと難しさを改めて感じた1日でした。
これから夜にかけて、我々のいる海域は海況が悪化するということで、船は移動を始めました。
夜から朝にかけて沖縄本土の近くに到着の予定です。

それでは、また明日。


Aフレームの合間から夕日が・・・



5,000mからお帰り・・・ ブ○メン!



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