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第6回 三沢と川田と当時の僕(5)


 95年のチャンピオン・カーニバルは本命不在の状況で開幕した。三冠王者のハンセンを絶対的な本命として扱うのは難しい。ならば三沢や川田が優勝候補となるはずだが、三沢にとって過去一度も優勝していないこのシリーズは鬼門であったし、川田もベルトを無くした直後で勢いという部分では不安があった。小橋や田上も急成長してきており、さらに、外国人勢や若手の域を脱しつつあった秋山なども参加。星取が読めない状況だった。
 ウィリアムスが家庭の事情で急遽来日をキャンセル。不穏な空気も感じられる中で、いきなり飛び出したのが田上だった。開幕戦で断崖喉輪落としを初公開。ややリードを許していた同期の小橋を完璧な形で下したのだ。
 予兆は確かにあった。チャンカーの前のシリーズであるエキサイト・シリーズの後楽園大会において、秋山の執拗な攻撃にキレた田上は、投げっぱなしジャーマンとダイナミックボムを披露。秋山を完膚無きまでに叩き潰していたのだ。
 ちなみに、開幕戦の後楽園大会のみ観戦していた当時の僕は、他の後楽園大会には足を運んでいなかったが、この田上火山の爆発ぶりを生で観戦していなかったことを悔やみ、この出来事をきっかけに後楽園大会も一日も逃さず観戦するようになった。これは団体が分裂するまで続くことになる。
 話を元に戻そう。田上が勝利したのも事件だったが、それを後楽園のファンが後押ししたのも事件だった。判官贔屓だった部分もあっただろうが、凄まじい人気を持つようになっていた小橋に歓声で勝ったという事実が、田上火山に火をともすことになる。
 川田にとってはパートナーの躍進は複雑な部分があったのではないかと思う。タッグ戦線を見据えてみればプラスになることだが、元々はライバル関係だっただけに、なんとしてもそれを上回る活躍を残したいと考えていただろう。ハンセンとの公式戦で勝利を飾り、三冠戦のリベンジに成功。いい流れで三沢との約1年ぶりのシングル戦に臨んだ。
 さすがに地方大会を観戦できる立場ではなかった僕は、この頃、よく全日本の試合結果情報ダイヤルを利用していた。まだ我が家の電話にはリダイヤル機能がついておらず、なかなか繋がらない情報ダイヤルに何度も何度も電話していたのを昨日のことのように思い出す。注目の大会となると全国のファンがこの電話番号に殺到していたようで、1時間以上電話の前で立ちつくしていることもざらにあった。
 もちろんこの日の三沢vs川田戦もこの情報ダイヤルで結果を知ることになった。結果はまたしても30分引き分け。ある程度予想される結果だったが、僕は翌日のスポーツ紙でその壮絶な内容を知ることになる。
 序盤で川田のフロントハイキックが三沢の左目に直撃し、三沢が負傷していたのだ。三沢も場外タイガードライバーなどを繰り出して反撃したものの、川田も垂直落下式ブレーンバスターやパワーボムで応戦。川田があと一歩のところまで追い詰めたが、当時の2人には30分という時間は短く、引き分けになった。
 三沢はこの試合で左目の眼窩底を骨折。1年前に引き続き、またしても負傷欠場するのではないかと思われた。しかし、三沢は欠場を拒否。ドクターストップまで振り払い、過酷なシングル連戦を続けることを決意した。
 そんな状態で試合を続けること自体無謀なことのように思われたが、皮肉なことにその悲壮な想いが三沢をさらに押し上げることになる。逆に三沢戦を越えたことで勢いづいてもおかしくなかった川田は、田上戦において断崖喉輪、ダイナミックボムなどを食らい轟沈。優勝戦線から一歩後退することに。最終的には小橋戦でも引き分けて3位という結果になってしまった。
 逆に三沢は田上、ハンセンとも引き分けたものの、無敗で田上との決勝戦に駒を進める。今シリーズで猛威を振るった断崖喉輪、さらにダイナミックボムや怪物ジャーマンを食らい万事休すかと思われたが、田上の畳み掛けをひらめきで切り返し、エルボーの乱射で流れを変えると、最後はタイガースープレックスの連発で激勝。悲願の初優勝を成し遂げ、最高の状態でハンセンの保持する三冠王座へ挑んだ。
 札幌中島体育センターで行われたハンセンとの試合。三沢はハンセンの衰えを知らぬパワーに苦しみながらも、最後の最後でラリアットをかわし、ヘッドシザース式の丸め込みでカウント3を奪取。試合後に荒れ狂ったハンセンだったが、結果的には三沢が五冠王に返り咲いた。
 表面的には盤石の体制を再び築いたようにも見えたが、三沢の周りでは様々な動きが始まっていた。菊地が超世代軍離脱し、小橋が独り立ちへの意志を見せ始め、タッグの発展的解消すら噂されるようになっていた。そして、シリーズ最終戦となる日本武道館において6度目の四天王対決が実現することになる。ここまでの戦績は川田組の1勝2敗2分け。最初の対決でこそ勝利していたが、それ以降は黒星が先行している。この年の1月に行われた世界タッグ戦は60分時間切れ引き分けに終わっていた。決着戦であると同時に、この試合での敗北は三沢&小橋に大きく差をつけられてしまうことになる。川田にとっては負けることの許されぬ戦い。この試合で再び川田は大きなうねりを起こす。





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