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第3回 小橋建太のその後

 第3回となるこのコラム。さて今回はなにを書こうか?プロレス、女子プロレス、総合格闘技、ボクシング……どの分野でも書きたいことはあるのだけれど、今回はどんなことよりも優先して、小橋建太の近況について触れてみたい。それが最初に書いたように、このコラムの姿勢にもつながるからだ。
 Gスピリッツ創刊号の巻頭記事となった小橋のロングインタビュー。実際に取材を行ったのは8月中旬のことで、それから1ヵ月ほど経った。先日、そのお礼の挨拶を含めて、僕はシリーズ後に行われる役員会の取材をしにNOAH事務所を訪れた。
 既にスポーツ新聞や週刊プロレス、スポーツナビ、携帯サイトなどでこの時の小橋のコメントは公開されているので、ご覧になった方も多いのではないかと思う。
 小橋は主治医、そして自らの体と相談しながら徐々にトレーニングのレベルを上げてきている。スーツを着た姿を見ても、明らかに肉体を取り戻しつつある。僕の目からはプロレスラーとして充分なレベルに達しているように見えたが、小橋の中ではまだまだ納得できるレベルではないらしい。
 ただ、トレーニングをハードにした影響からか、血液の数値が微妙に上昇したことも明らかになった(武道館大会のパンフレットにも記載されている)。僕の耳にも当然心配するファンの声が入ってきている。
 ただ、小橋自身の表情には悲観的なものは感じられなかった。もちろん楽観視できることではないが、小橋もそれを理解した上で、あくまでも復帰を目指している。この日も秋山準といつものような言い合いをしたり、オフィシャル携帯サイトで行われた人気投票で1位になったことを受けたコメントを必死に考えたり、東スポの記者と特訓シリーズについて談笑したりと、いい意味で普段通りの小橋だった。「Gスピリッツの売れ行きは順調なの?」と笑顔をのぞかせた小橋を見て、徐々に心も体もプロレスラーであることを取り戻してきているのだと感じた。
 まあ、あまり僕の意見ばかり書いてもしょうがない。ここでは、その日の小橋のコメントをできる限り掲載したい。


■小橋建太
――復帰についてなんですが、急かすような意味ではないですけれど、ご自身の中では何月ぐらいと考えていますか?年内という目標がありましたけど、それに対する手応えは感じていますか?
「いや、手応えというか…。まあ、体の中のことだからいろいろ微妙なこともあるんだけど、そこはなんとか乗り越えて、一日でも早くリングに上がりたいという気持ちはあります。なかなかやっぱりね、体の中のことなんで、微妙なことがいろいろ多くてね。ただ、食事とかでも制限していくと主治医とは約束をして。その代わり、練習のレベルは上げていきますと。リングに上がるためにそこは譲れないところなんで。制限しなくちゃいけないところは今、厳しくしているし」
――体重は一時期よりも増えたんじゃないですか?
「自分の中で焦っているということはないんだけど、やっぱり年内復帰ということを目標にして頑張ってきているんでね。でも、内臓なんでちょっと分からない部分もあって、微妙にやっぱり数値が悪いと。そういう部分もあって、もう一度見直しましょうということで、主治医とも話し合って」
――今は受け身もバンバン取っているんですか?
「バンバンってほどじゃないけど。ロープを走ったりとかもしているしね。まあ、君が思っているレベルと俺の思っているレベルはたぶん違うと思うから(笑)、どれぐらいのことを言っているのか分からないけど、自分の中ではね。だから、主治医と話したのは、そういう練習のレベルは上げていきますと。でも、自分のできること、食生活であり、他の部分の生活は制限していきますって約束をしたから。主治医もそこは約束せざるをえないというか…。本当は駄目なんだろうけど(苦笑)、自分の気持ちがやっぱり前向きになっているというか、なんとしてもという気持ちがあるんでね」
――ちょっと気になったのは、内臓で悪い数値が出たということでしたが、良くなっていた部分が少し下がってしまった感じなんですか?
「凄く微妙なんだよね」
――動いているからということなんですかね?
「自分の膝を手術してくれた佐々木先生に電話したりすると、“それは練習のしすぎだろう”って(苦笑)。そう言われたんですけどね。まあ、主治医とは生活の面からやっていこうと話してます」
――練習のレベルは変えずに、その代わり、食事などの制限は厳しくしていくと?
「いや、練習のレベルは変えないとかそういうのじゃなくて、上げていくと」
――上げていくと同時に、食事などでケアできる部分は厳しくやっていこうという感じ?
「そう。だって、リングに上がるためにね、やっぱり命を懸けているんだから、リングに上がるためにはちゃんとしたものを自分の中で作りたいしね。節制するんだったら他ですればいいことだし。出来ることはね」
――去年の暮れにうかがった時は、動物性のタンパクは取らずに、植物性のものだけという話でしたが、それより厳しくなっていくということなんですか?
「それより厳しいというか、なんていうのかな、凄いギリギリのラインなんだよ。自分でも分からないからね。ただ、練習のレベルは上げていって、復帰する時には、リングに上がる時にはベストの状態に持ってくると。その1試合で終わる可能性もあるし。でも、ベストには持って行きたい」
――今、練習というのは週に何日ぐらいで、何時間ぐらいやっているんですか?
「ずっと続けてやっている時もあるし、休みもなくね。それだから、ちょっと数値というか、異常があったのかもしれないし。凄い暑い時期があったでしょ?35度とか。あの時、道場なんていったら40度以上の暑さで、湿気なんかも凄いあったんだけど、あの時なんか気持ちの部分で休みたくないというのがね。ずっと休まなかったし。だから、何日に1回休むというよりも、自分の気持ち次第というか」
――暑い時期って2週間ぐらいありましたけど、ずっとやってたんですか?
「ずっとやってて。あの中で3時間以上やってたし、道場を出なかったしね。その中で、練習もハードになってくる。ということは、暑さにも耐えれる体になってきて。腎臓というのは脱水ということに凄く気をつけないといけないから。その脱水ということにも、この暑さ、湿気の中でやれたというのは、ひとつ大きな自信になったんでね」
――数値が悪いという話がありましたけど、それはベストなレベルを作るために体を慣らさないといけないと、次のステップに行くために溜めを作っているような段階なんですか?
「自分でそうやって作れるんだったら作りたいけど、それは分からないからね。実際本当に検査しないと分からないんで。自分でホップ、ステップと溜めを作っていけるんなら作りたいけど、いきなりドーンと落ちる可能性もあるし。ホップ、ステップ、そのままはたかれる、なんて場合もあるしね。だから、自分でも本当に何とも言えない状態で。ただ自分はベストを尽くす。もうやれるところまでやるということしか言えない。この先、また悪くなってドクターストップがかかる可能性もあるし。ただ、自分はやっていくしかない。リングに上がるためには」
――以前うかがった時には、リングの上でただ寝ているだけでも気持ちが落ち着くと言ってましたけど、今はリングでの練習も段階が進んでいるんですか?
「うん。だから、今はリングで寝ていても安心感を感じている状態じゃないよ(苦笑)」
――実際に他の選手と肌を合わせてみたり、実践的なこともやっている?
「だから、もっと自分の中でレベルアップしていっていると。本当に内臓のことなんで微妙なんだよ」
――ちなみに今は体重は量っていますか?どのぐらい?
「あのね、途中から量るのが嫌になったんだよ。量るのが一度は好きになったんだけど、途中でまた量らなくなってね。また量らないといけないなとは思っているけど。ただ、体は確実に大きくはなっているし」
――うまく折り合いを付けてベストに持っていくと。
「うーん、本当に微妙な、“0.いくつ”とか微妙なところなんで、自分では本当に分からない部分で。自分は主治医と約束したことをとにかく守っていく。その代わり、約束として、練習のレベルを上げていきますと。自分でやれることはちゃんとやっていきますと」
――ウェイトとかはガンガンやっているんですか?
「ガンガンやっているから問題があるんだろう(苦笑)」
――腕回りをみると、かなり戻ってきた感じがしますけど。
「まあ、あんまり自分では納得してないけどね。納得はできないけど」
――着ているスーツは病気になる前から着ているもの?
「これはね」
――全然ダボダボに見えないですよ。
「一時期はダボダボになった時があって、作り直そうかなとも思ったけど。でも、自分の納得するレベルというのはもっと高いレベルだと思うから。今の状態じゃ納得できないし」
――年内復帰という目標でしたけれど、今年も残り3ヵ月。その間になんとかしたいという手応えは見え始めてますか?
「こればっかりは自分だけで決めていいものではないと思うし。主治医も納得させないといけないと思うし。こればっかりは何とも言えないけども、自分の気持ちとしてはそういう気持ちでやってきたしね。年内という気持ちでやってきたんだけど、ここに来て…。無理が来たというか、無理という言葉はあんまり使いたくないんだけどさ。無理するなと言ったって、やっていること自体が無理なんだから、無理という言葉はあんまり使いたくない。そういうツケが今、回ってきたのかもしれないけど、自分の中では、だから沈むということはないし。どういう状態であっても前に進むしかないと思っているんで。どういう診断をくだされても前に進むしかないと思っているんで。ただ、全ての人を納得させて、リングに上がりたいと思っているんで。自分は年内ということを目標にしてきたけど、この先なにがあるか分からないし」
――もう一度リングに立つということだけは変わらない?
「変わらないというか、そのために今やっているし」
――復帰戦がちょっと先になる可能性も?
「それは主治医と相談して決めなくてはいけないことなんだけど、その年内というのは、うーん、それは自分の中ではやっぱり目標にしてきたことだしね。……こんなんじゃ記事にならないでしょ?」
――いや、休み無しで練習していたというのは…。
「2週間ぐらい続けていたかもしれないね。そういう気持ちにならなかったんだよ。なんかね、動きたいというか、この暑さの中でどれだけ自分が耐えられるのか。それをやっていたら本当はいけないのかもしれないけど、これから生きていく上でもそうだし、プロレスをやっていきたい自分がいるわけで、この猛暑が続いた中で、どこまで俺は出来るのかという気持ちもあったし。人から見れば、今試さなくてもいいんじゃないかとか思うかもしれないけど、今やらないと次がないというか。そこまで自分にそういうことをさせないと駄目だって。ただ、やっていく自分の体の自信が付いても、内臓のことだから、そこでまたなかなか折り合いが付かないんだよね。難しいよね、そういうのは」




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