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第17回 2008年に期待すること

 早いもので、このコラムも今日で2007年最後の更新となる。この1年を振り返ってみると、本当にいろんなことがあった。ちょうど1年前もたぶんモバイルゴングで2006年を振り返るコラムを書いていたような気がするが、まさか2007年がこれほどまで激動の年になるとは思ってもみなかった。まあ、1年後の自分自身がどうなっているのかは、まったくもって予想できないけれど(苦笑)。
 モバイル系の記者として活動してきたが、Gスピリッツの立ち上げ・制作に関わってみて、改めて紙媒体の面白さ、そして難しさを知ることができた。創刊号が出来上がり、自分の名前が誌面に載っているのを確認した時の高揚感は何とも言えず気持ち良かったのを思い出す。これまでとはまったく違う苦労も重ね、編集者としても、記者としてもこれまでにない経験ができた。また、違う分野の雑誌で記事を書くことも始め(パチンコ誌でハッスルを絡めた記事を書いています)、少しずつではあるが、記者としても広がりが見えてきた。これまでは『駆け出し記者』だと言い張ってきたが、そろそろしっかりとした形を作っていかなくてはいけない。そういう意味では新しい一歩が踏み出せたのではないかと思っている。
 プロレス界について、毎年最後のコラムで書いてきたことがある。それは「地味にコツコツと」ということだ。プロレス界が低迷した最大の要因は、逆転ホームランばかりを狙って、足元を見ていなかったということにある。格闘技に人気を持っていかれたとか、プロレスというコンテンツ自体に魅力が無くなったとか、様々な意見があると思うが、なにより一番大きいのはプロレス団体・選手、そしてマスコミの増長や過信であることに間違いはないだろう。ファンを見ずに、スポンサーやTV局の方ばかりを意識してきたツケが近年の凋落を生んだのではないだろうか。
 そういう部分を考えれば、今年はギリギリのところでプロレス界全体が踏ん張れたのではないかと思う。もちろん“今が一番苦しい時期であとは浮上するだけだ”なんて安易な考えはない。だが、これからさらに人気が下火になったとしても、それでも頑張れる、という姿勢はプロレス界で示せたのではないだろうか。
 世代交代は勝った負けたという表面的な部分ではなく、現実的に大きく進んだ。三銃士&四天王世代が一歩引いても大丈夫な土台が出来つつある(あくまでもリング上の戦いを見た場合)。プロレス全体のフォルムが崩れてきているが、それを作り直すのも若い選手たちになるだろう。
 ただ、個人的に気になっていることがある。それはプロレス界は様々な部分で両極端になってきていること。例えば、自分の好きな団体以外まったく興味を示さないファンと、常に情報を収集しているディープなマニアがいるのに、その間にあるべき中間層がいない。これは会場にいっても顕著で、異様に盛り上がっている人と一歩引いてみている人ばかりが目立っている。
 専門誌の記事にしても、ライトなものとディープなものは存在するのに、その中間に位置するものを提示できていないように思う。記事の内容という部分でも、現在進行形の記事はあるし、昭和を振り返る企画もあるのに、平成のプロレスを検証するような企画がない。
 ライトなファンに少しずつでもプロレスという分野の奥深い魅力を感じてもらう。「ファンを育てる」という言い方はおこがましいが、そういう部分が今のマスコミには欠けてきているのは否定しようがない。ネット社会がここまで進歩している中で、それなりのものを提示するのはとても難しいことだが、来年にプロレスマスコミが求められるのはそういう一歩突っ込んだ姿勢だと思う。
 プロレス自体もエンターテイメントに突っ込んだ方向と格闘技との間でいまだに揺れ動いている。そこで変に定義付けしようと考え込んだり、どうでもいいファン不在の論争を繰り広げるのではなく、中途半端なら中途半端でいいのだから、とにかくクオリティの高いものをファンに見せていくことが必要だ。マッチメイクひとつにしても、テーマがない唐突なカードではなく、ちゃんと理由付けをし、権威を守った上でタイトル戦を組んでいかなければならない。そのためには、少なくとも半年以上先を見越していなければ駄目なのではないだろうか。ビッグマッチがあるから“その場凌ぎで、刺激はあるけど、意味がない”カードを並べるのではなく、意味があるカードが組めるからこそビッグマッチを行うという本来の形に戻していかなくてはならない時期にきているはずだ。
 いくら地道にと言っても、大がかりな仕掛けがプロレス界に必要なのは否定できないが、それならば「絶対に成功する」という確信を持てた上でやってほしい。出たとこ勝負とか一部の人間の思い込みで失敗することがここまで何度も重なってくるとうんざりする。「負けるのは分かっていても勝負しなくちゃいけない」と考えて負けるならまだ潔いが「負けるとは思わずに迷走してやっぱり負けた」なんてことは絶対避けて欲しい。
 新しいものを吸収するのと同時に、古き良きものを守る。当たり前と言っては当たり前だけれど、それを全ての団体に期待したい。そしてなにより、“ファンありき”ということを来年も忘れずにいてほしい。




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