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第29回 グローバル・タッグリーグ戦徹底解剖

 今回はNOAH初となるヘビー級のタッグリーグ『グローバル・タッグリーグ戦’08』について、週刊プロレスを片手に書いてみたい。
 以前はリーグ戦自体をまったく行っていなかったNOAHだが、昨年から徐々に解禁。しかし、ここまで大規模なものとなると初めてとなる。
 出場チームを眺めても、“白星配給係”と揶揄されるようなメンツはおらず、想像以上に過酷なリーグ戦となりそうだ。当然星の潰し合いが展開され、失点4あたりが優勝へのボーダーラインとなることが予想される。
 だが、個人的に期待したいのは、圧倒的な優勝。全8チームが得失点差1〜2点ぐらいに並ぶと勝負論としては盛り上がるが、インパクトは残せず、NOAHマットの変化も印象付けることができない。「これだけのメンバーだから差がない」ではなく「これだけのメンバーだからこそ差を見せつける」ことが先決だ。勝つことではなく、負けないことを重視することで、優勝を狙うという作戦もあるが、そういう老獪さを吹っ飛ばすような爆発をファンは求めているはずだ。
 と、理想論を言ってみたが、一番ものをいうのはやはり経験。そこには“タッグチームとして積み重ねてきた経験”という意味と、単純に“リーグ戦の経験”という意味もある。チーム歴の長さや全日本時代のリーグ戦経験などは想像以上に大きな意味を持つんじゃないかと思う。
 そして、プロレスという競技の中で大きなウェイトを占める『タッグ』という方式をどこまで理解しているのかも重要だ。タッグチームで一番重要な部分、それは役割分担だ。
 一方がスピードでかく乱し、一方がパワーで試合を決める。一方が相手の技を受けてスタミナをロスさせて、一方が一気に押し切る。そんなチームワークは、例え同じようなタイプの選手のように見えても、実はしっかりと存在する方法論だ。
 そういう意味で三沢&小川組は経験、役割分担で言っても優勝候補筆頭といってもいいかもしれない。
 ただ、NOAHの景色は新しい時代へ大きく動いてしまっている。これが数年前なら三沢&小川組に死角なしと言えただろうが、そのバランスを簡単にぶち壊してしまう勢いを森嶋や丸藤たちの世代が身につけている。三沢は肉体的なコンディションが万全とはいえず、モチベーションをどこまで上げることができるのかが問題になってくるだろう。
 とは言え、このリーグ戦の中心にならなければならない丸藤&杉浦組にはかなり厳しい戦いが待ち受けている。ここまでの防衛戦を見ても分かる通り、2人は相手の技を受けながら隙を突いて勝負を決める戦い方をしてきた。普段の試合や一発勝負のタイトル戦ならば、2人のスタイルは効果的だが、今回はリーグ戦。そんな戦い方をしていたら、次戦にダメージを残してしまう。一発勝負では押し負けなくても、それが連日続けば、ちょっとした差に思えたパワーでもなぎ倒されてしまうのではないだろうか。 
 ましてや、他のチームを見渡しても、フィジカル面では圧倒的な差を付けられている。公式戦はほぼ20分以上の試合が続くだろう。そんな激しい戦いで、ほぼジュニアの肉体である丸藤と杉浦がダメージを残さずに戦っていくのは不可能。リーグ戦という形式の難しさが2人の前には立ちふさがることになる。(これは中嶋勝彦にも言える)
 全ての面を総合すると、僕が優勝候補として推したいのは秋山&力皇組だ。秋山は世界最強タッグに出場経験もあり、三沢や小橋、大森、彰俊、天龍など様々な選手とタッグを結成し、実績を残してきている。力皇もWILD2として王者経験があり、両者ともタッグというスタイルを知り尽くしていると言える。
 このチームの強みは、どちらも一気に勝負を付けられる実力と、反対に一歩引いて相手に勝負を任せる冷静さを持ち合わせている点。どのチームも高いレベルにあるとは言え、一番穴が見当たらないのがこの2人であるのは間違いない。
 ただ、どのチームに期待しているのかと問われたなら、森嶋&ヨネ組を挙げたい。森嶋が王者となって最初のシリーズ。リーグ戦だけでなく、通常の試合でも注目が集まるし、それだけプレッシャーも強く、対戦相手のマークもきつい。これをどこまで凌ぎ、上回れるかが大事になってくる。
 タッグリーグの公式戦はマスコミの注目も集まる。その中で、うまくパートナーと共同して、勝負を度外視した森嶋への集中攻撃を見舞えば、森嶋から直接勝利を奪うことは普段よりも簡単になるだろう。その結果があれば、GHCヘビー級王座の次期挑戦者候補に一気に浮上することになる。タッグリーグとはいえ、王者の周りには今後を見据えた動きが展開されるのは当たり前のことだろう。
 果たして森嶋がその重圧を切り抜けてタッグリーグを制することができるのか。森嶋とすれば、リーグ戦優勝、次のシリーズでのGHCタッグ奪取という青写真を描いているはず。しかし、一気に王座転落への布石を打たれてしまうかもしれない。
 ここで、一番問題になってくるのはパートナーであるヨネの動き。森嶋へのし掛かる重圧をどこまで肩代わりすることができるのか。2人はこれまでチームとして様々な苦労を重ねてきたが、ここで結果を残せばこれまでの足踏みを払拭できる。ましてやヨネは森嶋や力皇と共にヘビー級の新世代とされながらも、一人後れを取り、GHCヘビー級王座の戴冠経験どころか挑戦したことすらない。ここで一気に差を縮め、敵チームからではなく、パートナーから次期GHCヘビー級王座の挑戦者として名乗りを上げて欲しいところだ。


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