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第31回 ライバルは昔の自分

 このコラムも先週で30回を迎えた。正直、顔見知りの記者や知り合い以外から「読んでますよ」と言われたことがないので、一般ユーザーに届いているのかまったく分からないし、自信もない。普通ならこういうコラムは不人気なものから打ち切りになったりするが、このサイトにはそういう厳しい生存競争もなく、ノホホンと書かせてもらっている。まあ、そうは言っても一応30回という区切りを迎えられたのは嬉しいこと。この場を借りて、読んでいただいているユーザーの皆さんに感謝の言葉を贈りたい。いつもありがとうございます。
 僕がこれまでいくつかのサイトに書いてきたコラムを足していけば、200回近くになっているだろう。1回が平均2千字としても、原稿用紙千枚分。これが有名コラムニストの作品だったら1冊の単行本にでもなるはずだけれど、未だ僕は半人前のプロレス記者なわけで、当然そんな話はない。
 このコラムを書いているのは3月31日。ちょうど1年前の今日、当時僕が携わっていたモバイルゴングが閉鎖された。改めて考えてみると、つい最近のような、凄い昔のような不思議な気分になる。ただ、さすがに茅場町にあった日本スポーツ出版社にいた自分を思い出せないようになってきた。そして、新宿二丁目の辰巳出版で仕事をしていることが当たり前になってきている。
 実はモバイルゴング最終日に更新した自分のコラムの原稿は手元にない。僕は普段からワードなどを使用せずに、メーラーに直接入力しているが、その後、メーラーのデータが壊れてしまったため、全ての原稿が吹き飛んでしまったのだ。初回に橋誠のことを書いたことと、最後に“プロレスは生観戦してなんぼ”ということを書いたのは覚えているけれど、他の内容はまったく記憶にない。今さらながら、当時のコラムを読んでみたい気がする。
 自分の書いた文章を読み返す。それはある意味、記者や小説家だけが許される特別な感覚なのかもしれない。まったく読まない人もいるだろうし、読み返したくない場合もあるだろうけれど、ある程度の期間をおいて自分の文章と再会すると、なんとも言えない気分になる。
 今回をきっかけに、改めて自分のノートPCを徹底的に捜索してみたら、『格闘魂』時代後半のコラムを発掘することができた。2年前の同じく3月31日をもって格闘魂から籍が外れたことも思い出した。
 僕が初めて自分のコラムを書いたのは、2003年10月。記者生活4ヵ月目のことだった。
 格闘魂には日替わりコラムがあり、新間寿氏やDEEPの佐伯繁代表、元Uインター社長の鈴木健氏、越中詩郎などが執筆していたが、土曜日は『来週の見ドコロ見られゴロ』(タイトルはうろ覚えです)という次週の注目大会を紹介するコーナーになっており、編集部が担当する枠だった。僕が入社した当初は先輩が書いていたが、たしか先輩が急病かなにかで原稿を落としてしまい、急遽お鉢が回ってきた記憶がある。
 今なら30分程度で書けるけれど、その時は1日がかり。他の仕事をほっぽり投げて、必死にパソコンに向かった。初めて書いたコラムのテーマは小川良成。ちょうど小川が暴走して小橋を挑発し、GHCヘビー級王座挑戦に向けて動き出した頃で、小川がそんな行動を取った真意を見極める内容だった気がする。
 その後、先輩記者が退社することになり、12月頃からそのコーナーを僕が担当することになった。一応次週の興行についてがテーマだったが、基本的には自分の書きたいことを書いていた。
 途中でちょっとした問題が起こって、隔週連載となったけれど、それでも飽きずに毎回いろんなことをぶつけてきた。いつも速報ばかりやっていると、自分が文章を書く機械になったような気分になってきて、感じたことや思ったことがドンドン溜まり、ガス抜きが必要になってくる。だから、僕にとって定期的にコラムを書くことは苦痛ではなく、一種の薬だった。それが媒体を変えながら、途中で記名という形になり、現在に至るわけだ。
 3、4年前に書いた自分のコラムを読んでみると、文章的にはかなり稚拙だが、予想以上に熱い気持ちがこもっていて我ながら驚いた。最近のコラムは昔の自分に負けているとも感じる部分もあった。当時はほぼNOAHの全大会を取材していたから、自分だけしか見ていない真実(だと思ったもの)を伝えたくて仕方なかったのだろう。
 丸藤とKENTAがタッグを組み、成長していく過程をずっと追っていて、いつかライバルとして対峙する時期がくるだろうと書いていたが、実際にGHCを懸けて対戦することになったのだから、その考えは正しかった。森嶋の変化にいち早く食いつき、期待をかけている文章もあったし、今と変わらず橋に檄を飛ばす内容もあった。自分自身で読み返してもそこに熱があると感じたということは、当時の僕にもそれだけの情熱があったのだろう。その熱源はなにかというと、やはり取材を沢山しているという積み重ね。またあんな風に徹底的に取材がしたい、そんな気持ちに突き動かされた。
 コラムだけでなく、当時必死に集めたコメントやインタビューなんかも見つかった。それを読んでいるだけで、今の取材にも活きるであろうヒントが見えてくる。時間のあるうちに、データベースとして再構築し、それを元に、いつか各選手の過去と現在と未来をつなぐような取材がしたいと思う。そこで、僕の成長と変化もぶつけることができるはずだ。




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