[水]ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

[10.24]打倒EXPO!?


※これが表紙です。インパンクトあるでしょ。

 私の監修する『国宝級マスク研究』は先週、全入稿を完了。昨日、埼玉県下の印刷所へ出張校正に行く。そこでカラーグラビアの最終の色校正を済ませて、すべて私の手から離れた。あとは発売日(10月31日)を待つだけである。

 でも、何か寂しさを感じるのはなぜだろう。昔、『空中戦』シリーズや任せられて一冊の増刊号を作っていた時にこういう感覚に陥った。校了が近づくにつれて“ああ、もう少しで終わってしまうのか…”という感じになる。本が完成することよりも、完成するまでの過程が楽しいのは編集者&執筆者だから味わえる特別の感覚なのかもしれない。だから、この2ヵ月間は最も充実した時間を過ごさせてもらったと思う。

 その合間にメキシコへ取材に行った。表向きはクリスチャン・シメット氏主催の『EXPO MUSEO LUCHA LIBRE』のゲストだったけど、それに絡めてこのマスク本の取材に時間を割いた。たとえ、このイベントがなくても、私はメキシコへ行く予定だったし、そんな相乗りのチャンスと、本誌に関する多大な協力をしてくれたクリスチャンには感謝しかない。クリスチャンもあれだけ大きなイベントを初めて運営する立場だったから、イベントの前後、ほぼ1週間会社にも行かずに連日連夜、奔走していた。だから、彼の事務所でするはずの調べものは遅々として進まない。カメラは落として壊れるし、久々に下痢地獄にも襲われて、踏んだり蹴ったり。イベント後、“滞在期間中にやれることが全てできるだろうか”とイライラする日々が続いた(どっしり構えればいいのに、歳を取って、せっかちになったか。栗栖病が移ったか…)。

 日本で出発前にデザイナーに渡しておいた材料で前半のグラビアのレイアウトが仮の形で出来上がって、私のホテルに送られてきた。それをクリスチャンに見せると“すごく美しい”と感動してくれた。クリスチャンは、イベント後の挨拶回り(?)か、溜まった本職をこなそうとしているのか、職場に復帰したものの、事務所を留守にすることが多い。そんな時も周囲の秘書や使用人さんたちが私の立場を理解してくれて、資料ケースを運んで来てくれたり、昼飯のバーガーキングやドミノピザを買ってきてくれる日が続く。そこからはマイペースになって、腹の具合も回復へ向かう。ボビー・リーが「闘道館」の泉館長に買って来た下痢止めの薬と同じものを飲んだら良くなった。お陰様でクリスチャン遺跡からの発掘成果は上々、以上。いや、とんでもない「歴史的発見!」があった。それは本書を読んでいただければわかると思う(読者のみなさんと温度差がないことを願う)。

※クリスチャン・シメット弁護士の事務所で缶詰め状態で調べもの中。

 帰国して1ヵ月…この本にかかりっきり。合間にあった2つのトークイベントは、いい息抜きになった。帰ってからも大きな発見があった。ミル・マスカラスの代表的にマスク、通称「トレード」の原点についてである。まだ、マスラカスが“千の顔”…たくさんのマスクがあることをアピールしなくてはいけない時期。つまり65〜66年の短い期間に最低でも4枚の白サテンのトレードを作っていたという事実にぶつかった。私も以前から4枚はあると思っていたが、今回の調べで確信に繋がる。証拠写真を何枚も拡大して焼いて、それを私とメキシコで一緒だったSOLUCHAの林雅弘氏、タイガーアーツの中村之洋氏と三人で鑑定し、パーツの貼り方等の照合をする。その結果、やはり4枚のトレードが存在して、それがどこでどう使われたのかも判明した。その研究成果も観ていただきたい。

 「国宝級」と謳うのは、私の中での勝手な基準があるから。それはいわゆる80年代前半以前の旧ラメ、それ以前のボア等の特殊生地、さらに古い旧サテン時代のマスク。それだけではまだ国宝クラスとはいえない。マスカラス等の著名選手が実使用の上に、できれば着用日時や対戦相手まで明確なものを指す。今回登場する101枚(ざっと数えて)は、ほぼそれに該当するものである(あるいは国宝の下の重文=国指定重要文化財クラス)。今回の本にもし共通のテーマがあるとしたら、「着用報告書」かな。マスカラス、初代タイガーマスク、マッハ隼人…この3名に関しては、いつ、どこで、これを着用したという詳細の報告である。わかりそうで、調べ尽くさないとわからない…そうした、まとまったものが今まで無かったということだ。ここの部分に徹底的に拘って本書を作った。

 メキシカンに関しては裾が広いので、レジェンドと言われる著名選手たちに絞った。でも、メキシカンの場合、固定した顔だと、いつ、どこでこのマスクを被ったというのを断定するのは難しい。だから、「デビュー当時の顔から、完成型の顔」に行きつくまでの過程を考察してみることにした。それはそれで研究する材料がいろいろあって、やり甲斐があるものだった。

 今回の本はマスクをアートと位置付ける美術書という見方もできる一方で、歴史書という側面がある。読み物のページも多いし、隅々まで読むと、かなり時間を要するかもしれない。マスクというものを通してだけでなく、プロレスのさまざまな歴史を知るという意味で、貴重な文献として後世に残るものになってほしいと願っている。先のEXPOではサントやマスカラスのマスクを作ったラヌルフォ・ロペスの孫で「ロペスV世」と言われたアレハンドロ・ロペス氏とのトークショーをやった。そこでお爺さんとお父さんの話をじっくり聞けたのもプラスだった。“プエブラ”こと、今は亡きアレハンドロ・ロドリゲス氏のお墓参りには参加できなかったのが、心残りだ。本書では3年前にやったロングインタビューを掲載しているので、家族に頼んで本書を墓前に届けてもらおうと思う。


※アレハンドロ・ロドリゲスの墓所。名匠ここに眠る。

 既報通り、11月4日(日)14時から闘道館で出版記念のトークイベントを開催します。本書のメイキングやここでは書けない裏話をじっくりお聞かせします。また、本書に関する疑問、質問も承ります。当日、タイガーマスクは(赤金、牙付き3号、エレファント、二冠伝説)の現物マスクが登場予定。マスカラスに関しては、本書に掲載された超レアマスクの現物をセレクトしてお見せする予定です。また、本書で初登場した65年製のマスカラスのマスク1枚もこのイベントに合わせて日本緊急上陸…完全初公開します。

 もしも、オーナーさんからの許可がでれば、お好きな国宝級マスクと撮影会なんかやれればいいな、なんて思っています。私からの故アレハンドロのプエブラ製マスクなど豪華賞品が当たるプレゼント抽選会もやる予定。イベントの詳細、問い合わせ、申し込みは『闘道館』HPにて。自分で企画していながらだけど、何か、「マスク国立博物館」みたいな、すごそうなイベントになりそうだあ(ガードマンが必要か…)。クリスチャンのEXPOと出し物だけで勝負できるかもね。

 発売日まで、あと一週間か…カウントダウン開始。理想の購買方法は31日に一冊、4日に一冊…だね。






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