[水]ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

[1.23]夢を形にできるか

 毒舌で鳴らすキム・ドクこと戸口さんは毎年欠かさず、年末と年始に挨拶の電話をくれる。「今年も一年ありがとうございました」、「今年もよろしくお願いします」。律儀な人である。この人との付き合いは古い。あのジャンボ鶴田と名古屋で65分の死闘を演じた夏からだとすると、40年を超えてしまった。日本プロレス時代からのレスラーはもう数えるほどしか残っていない。その中でも米国で渡り歩いたテリトリーの数や滞在期間は群を抜いている。

 去年の秋頃からだったか、「清水さん、俺さ、アメリカの団体からオファーが来ていて、向こうに行こうと思うんだ」と聞かされていた。失礼ながら私は“また、いつものビッグマウスが始まったかな”と思って聞いていた。これまでにも得意技の「1億円が入る大きなビジネスがあるんだ」に始まり、「中国でプロレスの興行をやって、俺が育てた中国選手をスターにして儲けるんだ」とか、「ハルク・ホーガンを呼んで東京ドームで俺の引退試合をするんだ」とか、「ボクンシングの世界ヘビー級チャンピオンを招聘して中国、韓国、日本で防衛戦をやらせる」とか…これらの大風呂敷を数え出したらきりがない。その何一つ実現していないが、実際に何処のエージェントと常にそんな話をしているのは確かのようだ。


※「今の日本には俺みたいなデカい奴がいなくなった」とぼやく。

 いや、こういうビッグな夢追い人!?が今の世の中に少なくなったのかもしれない。他のマスコミが戸口さんをビッグマウスに呆れて無視した時期にも、竹内さんだけはずっと彼の話を聞いてあげて適切なアイディアを授けていた。私がいつもその横にいたのを戸口さんはよく知っている。竹内さんに対する感謝の気持ちが、今は私に向けられているようだ。この人の「ここだけの話だからさ」や「まだ書かないでよ」は、私には「書いてもいいよ」に聞こえる。だからといって、私は古いマスコミなのでプロレスラーから止められたことは、書かないようにしている。ただ、今回は書くよ。戸口さんの米国行きは夢や妄想ではなさそうだから…。

 戸口さんの所に親書を送ってきたのはIWWA(インディペンデント・ワールド・レスリング・アライアンス)、JADAT SPORTSのロック・パーソンズという代表からのようだ。「その手紙には俺に対して“サー”を付けて来たよ」とご満悦。ウエストバージニア(WV)が本拠地らしい。WVで思いつくのは真珠湾で大破した米国戦艦の名と『カントリーロード』の歌詞くらい。「そう、凄い田舎なんだよ。ハリーズビルとかいう町で、そこらに4月から住むことになると思う」

 聞けば4月に70年代〜80年代のオールドタイマーを集めたトーナメントをやるらしい。「マスクド・スーパースター、グレッグ・バレンタイン、ロニー・ガービン、カート・ヘニングとかが出るらしいよ」。ここにはトミー・リッチ、ケビン・サリバン、ダッチ・マーテル、ロン・フラー、エードリアン・ストリート、ジェリー・スタッブス、オースチン・アイドル、ブラッド・アームストロング…亡くなったディック・スレーターらが出ていたらしい。また、このプロモーションはWVだけに限らずテネシーのジェフ・ジャレットともタイアップしているようだ(聞いていると、何か楽しそうだなあ)。

「まあ、オールドタイマーだけの団体じゃないらしいけどね。現役ではザ・グレート・アクマってカブキさんみたいなペイントレスラーが人気あるらしいよ。トーナメントの後も、仕事があれば、残って住み続けようと思っている。その時はカミさんを日本から呼ぶつもり」

“えっ、日本を出てまたアメリカに住むの?”。
「どうだかな。俺は日本のプロレスには呆れたよ。みんな同じような技や動きばかりして、レスリングをしようとしない。特にグラウンドをしようとしない。レスリングは基本、グラウンドだぞ。しっかり組んで、腕や足を取りに行くレスリングは日本から消えちまったな。ファンの目も狂ってしまったよ。だから日本のプロレスから足を洗って、アメリカに行こうと決めたんだ。顔見知りの彼らとならば昔のレスリングができるからな」


※75年2月、テキサス修行時代のキム・ドク。vsロディ・パイパー。

 かつてアメリカへの武者修行は若手レスラーたちの憧れであり、レスラーの成否が問われる片道切符だった。戸口正徳がロスに飛んだのは72年12月で、弱冠23歳。今年の2月に71歳になろうとする戸口さんが再びアメリカへ旅立とうとしている。もう武者修行ではないけど、ひょっとしてこれ、最高齢渡米の記録だろうか…。ともかく怪我をせずに頑張って、夢を形にしてもらいたい。

 79年…私がアメリカとメキシコに旅立った時点に戸口さんは日本に居た。日本マットでピークを迎えている時期だった。だから1月29日、大阪府立体育会館での鶴田とのUN再戦を観ていない。70年代のキム・ドクのアメリカでの試合を一度ナマで観たかったなあと思う。他に私が渡航中で知らなかったのは坂口征二vsジョニー・パワーズの北米ヘビー級選手権や坂口&ストロング小林vsボブ・ループ&カール・フォン・ヘスの北米タッグ。猪木vsミスターXの異種格闘技戦(これは観なくていいか…。でも、カーンや佐山、木村…メキシコ在住の新日本選手たちの間では話題になっていたよ)。それとアニマル浜口とマイティ井上がヤマハブラサースからIWA世界タッグを奪回し、グラン浜田が凱旋した『ビッグ・ファイト・シリーズ』の開幕戦、そして新日本創立7周年記念大会…。こういう時期に若手の私は彼の地で「武者修行」していたのであります。その時代、アメリカやメキシコには、戸口さんの言う「レスリング」が確かにありましたよ…。



『ビバ・ラ・ルチャVol.39 ドクトル・ルチャ初渡米・初渡墨40周年〜すべてはあの取材旅行から始まった〜』
■日時 2月3日(日) 開場12:30 開始13:00
■会場 新宿・ネイキッドロフト(東京都新宿区百人町1−5−1 百人町ビル1F)
■チケット 3000円(当日3500円)※飲食費別
■出演 “ドクトル・ルチャ”清水 勉
■司会進行 パニコXX
■電話予約 ネイキッドロフト03−3205−1556(16:30〜24:00)
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