[水]ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

[2.20]曜日プロレス

 今、両国国技館(ジャイアント馬場没20年追善興行)から帰って来た。満員だった。先週金曜日の後楽園ホールの『プロレスリング・マスターズ』は超満員だった。平日でも興味深いカードや注目イベントを打てば、お客は入るということだ。平成になってからか、日曜日に、休日、祭日狙いのイベントやビッグマッチが増えた。試合開始時間もマチマチになってしまった。でも、日本のプロレスは元来、曜日に限らず、やるものだったし、試合開始時間は午後6時半とほぼ決まっていた。特にテレビ中継がゴールデンタイムにある頃は平日に大きな試合があるのが当たり前で、生中継の大会ならば当然だった。


※両国国技館は満員。見応えのあるイベントだった。

 昭和の、あの有名な試合、あの大事な大会が何年何月何日に行われたかということは記憶に残っているものだ(最近はボケてどんどん忘れていくが…)。でも、生中継の試合でなかった場合、「あれは何曜日だったか」という記憶はほとんどない。日本のプロレス興行がテレビマッチ以外、曜日で行われてこなかったからだ。ところが、世界のプロレスは違った。テリトリー制のアメリカ・カナダもメキシコも決まった曜日で、決まった会場で、決まった時間に試合が始まった。ファンは「今日は水曜日だからプロレスのある日。早く仕事を切り上げて会場へ行こう」となる。それが個々の週間カレンダーに組み込まれ、プロレスを観に行くという習慣がつく。インターネットなどない時代…老若男女、彼らの生活のリズムの中に曜日のプロレスがあったのだ。

 テリトリー時代のアメリカの場合、毎週、あるいは隔週の形で、決まった曜日に、決まった会場でプロレス興行が行われていた(中には季節限定や1ヵ月単位の会場もある)。ただし、日曜日は基本的にイベント関係をやらないのがアメリカという国だった。日曜日は教会に行ってお祈りを捧げる日だから…らしい。確かにラスベガス等で行われるボクシングのビッグショーは現在でも必ずと言っていいほど、現地時間土曜日の夜開催され、日曜日にはやらない。

 では1970年の北米マットを例にとってみよう。日曜日に毎週必ず興行をしていたのはドリー・ファンク一家サーキットのニューメキシコ州アルバカーキ、スチュ・ハート一家のカナダ・アルバータ州エドモントンなど極めて少ない。そして大きい所ではトロントのメイプルリーフガーデンもほぼ毎週日曜日に定期戦を打っていた。他地区がお休みしているから、プロモーターのフランク・タニーはアメリカからビッグネームをスポットで呼びやすかったはずだ。他には不定期でAWAエリアのミネアポリスやセントポール、オクラホマ州タルサ等で日曜興行があった時もあるが、極めて稀のようだ。


※トロントのメープルリーフガーデンは日曜開催でした。

 これがメキシコへ行くと、ガラリと変わる。日曜日の定期戦がヤマほどあるのだ。それがプロテスタントとカトリックの国の違いなのか、宗教上どうなのか、よくわからない。日曜で有名なのはエル・トレオの定期戦。メキシコシティではアレナ・コリセオ、ピスタ・レボルシオン、エル・コルティホ、少し外れたアレナ・ナウカルパンなど、みなさんが知っている名前の会場は日曜開催をしていた。70年代ならば首都圏だけで約30会場が日曜開催だったので、ハシゴする選手も多かった。地方に飛べばアレナ・コリセオ・デ・グアダラハラやアレナ・コリセオ・デ・モンテレイ、モヌメンタル・モンテレイ闘牛場などの著名な大会場も日曜。これだけでも、この国はどれだけ選手がいて、どれだけエストレージャたちが稼いでいたかがわかる。

 ちなみに当時、毎週定期戦を打っていたアレナはメキシコ全国で214あったといわれている。その中で日曜日開催のアレナは3分1くらいあったと思われる。それらのアレナも毎週2回のルチャ興行を打つのが常識で、一つの曜日には他地区から名のある選手が来る大き目な興行、もう一つ曜日には地元選手たちが中心になる小さめの興行である。平日興行も多いが、土日に試合は急増する(昔に比べると試合数は激減してしまったが、メキシコでは、今も曜日で決められた週間定期戦のシステムが残っている)。

 私が1979年に取材で行ったヒューストンのザ・サミットという近代的なアリーナ(1万7000人収容=当時NBAヒューストンロケッツの本拠地)は、現在教会になってしまったようだ。プロテスタントのアメリカでは説教や集会本位の質素な教会が多いと聞く。みんなが集まれる大きな場所ならば、たとえ十字架がなくてもいいらしい。

 一方、メキシコはゴシック様式のいわゆる天井が高くて屋根の尖った教会らしい荘厳な造りの教会でミサをあげる。各家庭や職場にも祭壇はある。それはそれで、ちゃんと祈りさえあげれば、「あとは今日一日楽しく過ごそう」という風習がメキシコにはあるのだと思う。平日のメキシコの定期戦は午後8時〜9時試合開始だが、ドミンゴ(日曜日)は昼間から始まる。トレオやコリセオなどは午後5時開始が定番。「少し早めに始めて、早く終わって、明日からの仕事に備えよう」という配慮のようだ。余談だけど、世界一労働時間が長い国はメキシコらしい。暇そうに見えるけど、働く国(?)なんだなあ。


※UWAの総本山エル・トレオは毎週日曜開催だった。

 その国で70年代末のテンポラーダ(定期戦)のプロレス世界を2年半も経験した佐山さんと今週土曜日にはトークイベントがあります。どんな話が飛び出すやら、私自身も楽しみにしています。






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