[水]ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

[3.14]B級ルチャドールは誰?

 そうそう、先日ミック博士から『昭和プロレスマガジン』の45号が送られてきた。今回の特集は「嗚呼!愛しのB級レスラー」。B級レスラーか…面白いことを考えるものである。人気投票の結果も興味津々だったし、かなり楽しく読ませてもらった。



 誰がどう選ばれ、掲載されたかはネタバレになるから控えるけど、ここでは一組のメキシカンだけを拾い上げさせてもらう。ブラック・ゴールドマンは「やっぱり」って感じで選出されていた。それもエル・ゴリアスとセットでね。私の大好きな、異議なしの「B級レスラー」たちである。ゴールドマンもゴリアスもロスでは「ニューメキシコ州出身」として紹介されているが、れっきとしたメキシコ人だ。

 ゴールドマン(本名ビクトル・マヌエル・ゴンサレス・バラーハス)は名門ディアブロ・ベラスコのルチャ学校出身でマスカラスの先輩にあたる。デビュー当時、彼がマスクマンだったということはあまり知られてないが、1964年10月30日のアレナ・メヒコでエル・エンフェルメロとのマスカラ・コントラ・マスカラに敗れてマスクを取られている。この時点でアレナ・メヒコのメインを張れただけでも、その実力のほどがうかがえる。

 素顔になったゴールドマンは66年9月6日のマタモロスでパンテラ・ネグラを破ってメキシコ重量級の最高位ナショナル・ヘビー級チャンピオンとなった。しかし、11月2日のトレオンで地元の英雄ポロ・トーレスに敗れて初防衛に失敗する。トーレスは55年11月に遠征先のヒューストンでザ・シークを破ってテキサス・ヘビー級王者にもなった実力者である。

 そのトーレスがゴールドマンを破った一週間後の初防衛戦でアタックしたのがエル・ゴリアス(最近、私はゴリアテと呼ぶし、書く)である。ゴリアテ(本名パブロ・オルダス・クリスピン)はシウダ・フアレス出身。ゴールドマンより2つ年上で、ルチャ創成期の名伯楽ゴンサロ・アベンダーニョが師匠なのだから筋金入りのシューターだ。ゴリアテは68年3月30日、地元のシウダ・フアレスでヘンリー・ピルーソを破ってナショナル・ヘビー級チャンピオンになる。マスカラスがロスへ旅立つ2ヵ月前のことである。

 メキシコでは昔からヘビー級の選手層が薄い。その最高位であるナショナル・ヘビー級の王者となると、それ以上のタイトル(世界王座)がないために、アメリカへ出て行くのが慣習となっていた。メディコ・アセシノ、前述のパンテラ・ネグラやポロ・トーレス、ヘンリー・ピルーソがそうだったように…。後のグラン・マルクス、ラウル・マタもそのパターン。それはナショナル・ライトヘビー級王者にも言えた。古くはブラック・グスマン。そしてルーベン・フアレス、ラウル・レイジェス、ミル・マスカラス、レイ・メンドーサ、アルフォンソ・ダンテスはこの部類に入る。


※ブラック・ゴールドマンとグレート・ゴリアテ。コイツらは真の職人だ。

 ブラック・ゴールドマンとグレート・ゴリアテの2人もアメリカンドリームを胸に国境を越えて行った“脱墨者”たちである。69年に先にロス入りしたのはゴールドマン。「私が彼をラベールに推薦した」とマスカラスが言っていた。そしてマスカラスの天敵となっていく。ゴリアテは70年にメキシコ入りする。彼らはロスでアメリカス・タッグ王座を22度獲得しただけでなく、テキサス、ジョージア、カンザスと全米各地のタッグベルトを巻いた。MSGにだって上がった。

 日本ではアジア・タッグではなく、インター・タッグに挑戦させてほしかった。BI砲はこういうチームと戦うべきだった(きっといい試合したと思うよ)。単品での実力も折り紙付きだし、どのテリトリーに行っても、プロモーターは扱いやすく、ファンをたっぷり喜ばせる…彼らこそB級レスラーの鏡のようなレスラーだと思う。

ここで突然の思いつきで、私が選ぶ「嗚呼!悲しきB級ルチャドール ベスト20」を発表する。
【1】エル・ファンタスマ
【2】ダミアン666
【3】ザ・キラー
【4】バビエル・クルス
【5】ケンドー
【6】レナート・トーレス
【7】ベビー・リチャード
【8】エル・ブラソ
【9】ソラール2号
【10】マサクレ
【11】チノ・チョウ
【12】エル・ハリスコ
【13】モグール
【14】エル・ビキンゴ
【15】ハビエル・ジャネス
【16】ペペ・カサス
【17】レオ・ロペス
【18】エル・モナルカ
【19】エル・バガブンド
【20】エル・ポラコ

 名前を聞いたことあるだろうルチャドールを極力選んでみた。「エストレージャだったのか」と言われると、みんな「?」が付く選手たちだ。メジャータイトル獲得者も混ざっているけど、線香花火のような感じだったかな(どうしても個々の選出理由を知りたい人は、個人的に聞きに来てほしい)。

「B級レスラーなんだけど、メキシコではエストレージャだったという選手」もいる。エリック・エンブリー、ジェリー・ロンドン、ダビッド・モーガン、クリス・アダムス、ファブロソ・ブロンディ(ケン・ティムズ)なんかはそういう選手だ。今回の『昭和プロレスマガジン』の「好きなB級レスラー人気投票」で日本人選手2位タイだった栗栖正伸も「B級レスラー→A級ルチャドール」に当てはまる。あの時代、“史上最凶日本人ルード”マサノブ・クリスは間違いなくエストレージャだった。

 ということで、5月3日(木祝)のトークショー『ビバ・ラ・ルチャ』のゲストは栗栖正伸に決定! ゴールデンウィークだけど、栗栖さんはこのトークショーのためだけにわざわざ大阪から来てくれることになった。“イス大王”のB級トークをお楽しみに!



ドクトル・ルチャのトークイベント『ビバ・ラ・ルチャVol. 36』は5月3日(木=憲法記念日)、午後1時より新宿ネイキッドロフトで開催(開場は12時半予定)。
ゲスト:栗栖正伸
題して『アンタら、俺を怒らせるなよ! 〜嫌われ者マサノブ・クリスの喧嘩旅〜』






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