[水]ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

[9.13]32年周期の大激震

 チアパス州沖を震源としたM8.1のメキシコ大地震はショッキングだった。アミーゴたちの安否を確認できたものの、被害が大きく、心配は続く。甚大な被害があったのはチアパス州とオアハカ州。メキシコシティも大きく揺れたが、ほぼノーダメージだったようだ。アレナ・メヒコも通常興行を続けている。

 思い出すのは1985年9月19日に発生したM8.0の大地震。震源はミチョアカン州の河口付近。あの時は首都メキシコシティに大きな被害があって、前年、私が結婚式の時に泊まったアラメダ・ホテル(猪木、アンドレら新日本VIPの定宿)も倒壊。3日後に行われる予定だったアニベルサリオは中止となり、アレナ・メヒコの定期戦が再開したのは翌年2月7日だった。

 地震から2ヵ月後の11月30日、パラシオ・デ・ロス・デポルテスにおいて大地震義援金大会が行われた。これはEMLL、UWA、スペル・リブレスの3団体合同のオールスター戦。メインはフリーのミル・マスカラスとUWAのビジャノ3号、EMLLのアトランティス(デビュー2年目)がトリオを組んで、UWA最強ルードコンビのペロ・アグアヨ&フッシュマン、EMLLルードのエル・ファラオンと6人タッグで対戦している。


※85年にパラシオで開催されたメキシコ大地震救済支援大会。

 セミはラヨ・デ・ハリスコ・ジュニア&トニー・ベネットvsシエン・カラス&マスカラ・アニョ・ドスミルのEMLL同士のマッチング。他にチャマコ・バラゲスvsエル・サンニコのNWA世界ミドル級選手権、イホ・デル・サントvsエスパント・ジュニアのUWA世界ライト級選手権があった。スペル・リブレスはスペル・ムニェコ&スペル・ラトン&ダルド・アギラールvsカナージャ&リキ・ボーイ&バルバ・ネグラの6人タッグを提供。往年の名ルチャドール、エンリケ・ジャネス、ウォルフ・ルビンスキーも姿を見せ、あのレイ・メンドーサとカルロフ・ラガルデはUWAのオフィシャル・レフェリーとして、この日デビューしている。

 今のCMLLとAAAのドロドロの関係では、たとえそれがチャリティーだとしても、合同興行など望めないであろう。あのパラシオでの救済大会の翌日(12月1日)、モンテレイ(カルロス・エリソンドの独立プロ)でエル・ソリタリオに敗れてマスクを取られたのがドクトル・ワグナー(パパ)だった。あの85年の大地震から32年目の大地震…ドクトル・ワグナー親子も32年周期でマスクを取られたということになる。では、ドクトル・ワグナー父がマスクを取られた32年前に何があったか調べてみた。


※大地震から2ヵ月半後に行われたワグナーvsソリタリオのマスカラ戦。

 1953年に大きな地震はなかったようだ。ところがルチャ・リブレの世界ではこの時期、EMLLが「テレビセントロ」というテレビ主導の新団体が対峙して、興行戦争による大激震が起きていたのだ。日本では街頭テレビで力道山&木村vsシャープ兄弟に熱狂する前年である。この年がEMLLにとって20周年で、節目のアニベルサリオは9月25日のアレナ・コリセオで行われた。

 メインではブルー・デモンがエル・サントを破ってNWA世界ウェルター級王座を奪っている。この試合は「テレビセントロ」に対抗して特別にテレビ中継された。「それは超スペシャルなことだった」とサルバトール・ルテロ・カモウ代表は言う。また実はこの前年の11月にサントvsブラック・シャドーのメキシコ人大物同士初マスカラ・コントラ・マスカラがあった。ピッタリ32年周期とはいかなかったが、超ビッグネームによるマスカラ戦の大激震はこの周期で起きることがわかる。それもすべて違う団体で…。


※1953年の『ボクス・イ・ルチャ』誌はコリセオvsテレビセントロの戦争中!

 震源地のチアパス州はメキシコ南東部にあって、スペイン語も喋れないマヤ族の貧しい農民が多く、一番開発の遅れた州といわれている。ルチャは州都のトゥストラ・グティエレスで毎週金曜日に定期戦が行われていた。

 記録によれば77年2月25日にここでエル・シグノvsエル・マテマティコのUWA世界ライト級選手権が、78年3月10日にミル・マスカラスvsテムヒン・エル・モンゴル(キラー・カーン)のIWA世界ヘビー級選手権が、同年11月16日と12月1日のドス・カラスvsベビー・フェースのナショナル・ライトヘビー級選手権が、81年10月17日にエル・ソリタリオvsアニバルのUWA世界ジュニア・ライトヘビー級選手権が、82年6月13日にロボ・ルビオvsファルコンのUWA世界ウェルター級選手権が、84年4月6日にペロ・アグアヨvsビジャノ3号のWWFライトヘビー級選手権が、それぞれこの地で行われた。どれもUWA系の大会で、84年8月にロス・トレス・ブラソスがルード転向直後、当地に遠征した時、暴れ過ぎて客と殴り合って州外追放処分を受けたことがあった。なお、残念ながらチアパスから名のあるルチャドールは出ていない。強いていうなら78年11月3日にボビー・リーのUWA世界ウェルター級王座に挑んだ地元のアソカリーくらいか。

 被害の大きかったオアハカ州はサポテカ文化やミシュテカ文化が繁栄した土地で、モンテ・アルバンやミトラなどの古代遺跡が有名。オアハカでもマスカラスvsテムヒンのIWA世界ヘビー級選手権があった(78年5月28日)。82年10月17日にはイルマ・ゴンサレスvsローラ・ゴンサレスのUWA世界女子選手権が行われた。UWA崩壊後も、CMLLから頻繁に選手が送られている。

 おっと、このオアハカからはエル・シグノが出ていることを忘れてはならない。シグノはUWA3階級を制覇した名ルチャドールで、何より、ロス・ミショネロス・デ・ラ・ムエルテのリーダーとして名を馳せた。このキャラクターはオアハカの“死者の日”からイメージされたものだという。今年の“死者の日”(11月1日)は特別なものになりそうだ。ともあれ、チアパスもオアハカも、いち早く復興して、元気を取り戻してルチャが開催されるようになってほしいものである。

“ドクトル・ルチャのビバ・ラ・ルチャVOL.34”
『あのプロレス8ミリ大会よ、再び! 〜秘蔵映像鑑賞会〜』第2弾
PELICULA DE SECRETO

 昨年秋に大好評をいただいたプロレス秘蔵・未公開映像大会。その第2弾を今年もやります。題して『ペリクラ・デ・セクレト』(秘密動画)。これは今から40年前にマニアックス主催で数十回行われた「プロレス8ミリ大会」の復刻企画。YouTubeを探しても決して出てこない日本マット、米国マット、メキシコマットの試合、関連マル秘映像を集めました。みんなでワイワイ言いながら古き良き時代の貴重映像を見ましょう。

■日時:10月8日(日)開場12:30 開始13:00
■場所:新宿・ネイキッドロフト(東京都新宿区百人町1−5−1 百人町ビル1F)
■料金:予約3000円、当日3500円(飲食代別)
■出演:ドクトル・ルチャ(清水勉)
■MC:パニコXX
■電話予約:ネイキッドロフト03−3205−1556(16:30〜24:00)






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