[水]ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

[8.22]戦友と師匠

 さあ、今週末、8・26はトークショーだ。久々の単独ライヴになる。昨今はトークショーブームで、いろんな主催者がいろんなゲストを呼んで、たくさんのイベントが開催されている。私もそれを続けてきたわけだし、良し悪しは別に、今や一つのプロレスカルチャーになっている。ただ、私のイベントの場合、ちょっと原点を振り返れば、私個人で話をすることから始まったわけだから、ゲストなしで、そこに立ち返ってみるのもいいかなと思った…。何せ、私も馬場さんが亡くなったのと同じ年齢になったわけで、そろそろ何かを言い残しておくため、伝えておくためにも、今回のイベントは格好の舞台かと思っている。



 今回のテーマは『嗚呼、愛しのゴング創刊50周年秘話』。1968年の月刊ゴングの創刊から今年で50年…。私が先輩たちに聞いた話を含めて、まずはゴング創刊の秘話を紹介したい。そして、それを手にした私を含む当時のプロレスファンが受けた衝撃、何がゴングは違うのか、他誌をどう出し抜いたのか、その当時のプロレス情勢を含めて話を進めていきたい。

 さらにどうやって「海外に強いゴング」が生まれていったのか、私がどうゴングと関わっていったのか、ゴング一冊はどういう編集過程を経てできるのか、門外不出のネタを持っての取材、締め切りを掻い潜っての入稿大作戦など、ネタは腐るほどある(それが私の日常だったから…)。先日、「どんな話をしようか…」と軽い打ち合わせをしたら、あっという間に5時間を経過してしまった。日曜日も時間の限り話しましょう。

 さて、このイベントに先立ってリハビリ中のウォーリー山口氏の病院にお見舞いに行く。昨年、心筋梗塞で倒れて、親族から“危篤”の連絡までは届いたが、無事に一命をとりとめ、今はリハビリ生活を続けている。言葉は出せるけど、ほとんど崩れた英語ばかり。でも、こっちの言葉はだいたい理解してもらえるような状態だ。持参したゴングの1000人名鑑を見せながら一人一人リアクションを試したり、いろいろなことを思い出させてみる。

「ところで、ウォーリー。ゴングは今年で50年目なんだよ。1968年創刊で、今年は2018年だろ。もうあれから50年経ったんだよ」
「オー、イエイ」(ちょっと驚いた感じのリアクション)
「それで今度の日曜日に新宿で50周年のトークショーをやるんだ」
「グー」(よく解ったようで、大きく頷く)
「だけど、誰もゲストがいないんだ。本当ならばウォーリーなんだけどなあ。もう誰もいないんだ…」
「アアアッ」(そうなんだ…という淋しい顔)
「しょうがないから、俺が3時間喋りまくるよ(苦笑)」
「ワハハハッ」(よくわかっているじゃん)
「ウォーリーには観に来るだけでも、来てほしかったけどね…」
 そこでウォーリーは私の手を強く握り返して来た。それは“俺の分まで頑張ってよ”というサインだと受け止めた。
「タイヤー…」と言うからと車椅子で自室のベッドに戻る。車椅子を押してくれた介護士さんの若い女性に私はこう話した。
「この人と一緒に30年間も、こういう本を作ったんですよ。英語がペラペラで、こういうアメリカのスター選手たちとみんな友達で、一緒にアメリカにも行ったんですよ」
「へーっ、そうなんですか。山口さんって凄い人なんだあ」
「年配のプロレスファンなら知らない人はいないですよ。ウォーリーって呼んであげてください。彼の愛称なんで、その方がいい反応しますよ」


※この数秒前まで泣いていたのに…。

 帰り際、ウォーリーは泣いた。別れが寂しかったようだ。
「また、来るから、シー・ユー・アゲイン」
「OK」(わかった…また来てよって感じ)
それでも彼は泣き続けて手を離さない。私より2つ年下のウォーリーは業界のちょっと先輩。彼は社員じゃないけど(嘱託)、私が越えて行かなければならない目標、ライバルだった。でも、この日、ライバルではなく、良き戦友だったことが確認できた…。


※「ミスター・ゴング」竹内さんのお墓参りに…。

 病院を出た足で師匠の竹内宏介さんのお墓参りに向かう。繁子夫人も同行していただいた。墓前で、ゴング編集部時代の仕事や遊びなど、ありし日の竹さん話に時間を忘れて話し込む。今年の七回忌に竹さんは法名を貰った。「瑠光院宏道翠明居士」。竹さんらしい明るい感じのいいお名前だ。墓前に大好きなフリッツの表紙の別冊ゴングを備えて手を合わせた。 “あれから半世紀経ったんですよ。日曜日にゴング50年の話をさせてもらいます。応援してくださいね”。“ミスター・ゴング”の後押しこそが一番の励みになる。

 竹さんとウォーリー…二人とゴングで過ごした日々は、今振り返って最良の時間だったと思う。我々の仕事の場合、それが形として残っているという喜びもある。若き日の本誌や別冊にも思い出もいっぱい染み込んでいる。でも私の成熟期に出した毎年の『プロレス・オールスター・カタログ』、『日本プロレス40周年史』、『ザ・レスラー・ベスト1000』、『伝説の死』など、三人で一緒に作ったものは、今でも見返すことが多いし、調べものに使っている。

 あの頃の我々のモットーは「日々の自分たちの資料にするため本。10年後、50年後、未来のプロレスファンたちの資料にするための本作り」だった。戦友のウォーリーとマエストロの竹さんからのプッシュを得て、勇気百倍。日曜日は頑張って「ゴング愛」を語らせてもらいます。あの日、あの時、あの本に魅せられて育った…隠れゴング信者たちよ、集まれ!


※竹内さん、ウォーリー、私。78年夏の鹿児島。

『ビバ・ラ・ルチャVol. 37 嗚呼、愛しのゴング創刊50周年秘話 〜そして誰もいなくなった〜』
■日時 2018年8月26日(日) 開場12:30 開始13:00
■会場 新宿・ネイキッドロフト(東京都新宿区百人町1−5−1 百人町ビル1F)
■チケット 3000円(当日3500円)※飲食費別
■出演   “ドクトル・ルチャ”清水 勉
■司会進行 パニコXX
■電話予約 ネイキッドロフト03−3205−1556(16:30〜24:00)







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