[水]ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

[9.05]訃報続き…



 今度の日曜日は先週も触れたこちらのイベント。これは我々選考委員の発表と討論が中心の構成になるが、参加者投票のコーナーもあって、ポイント制でランキングを決める。どんな結果が出るやら、当日はみんなで楽しみましょう。ぜひお越しいただき投票してください。

 その翌日からメキシコへ飛ぶ。メキシコシティの「ワールド・トレード・センター」で行われるクリスチャン・シメット主催の『EXPO MUSEO LUCHA LIBRE』(9月14〜16日)に出席と諸々の取材のためだ。以前にも触れているが、クリスチャンの妻アルマ・ディアスはビジャノ1号の娘、あのレイ・メンドーサの孫にあたる。さらに言うなら、アルマの母の父は“ルチャ・マスコミの先駆者”ホセ・ルイス・バレロ。その弟のエクトール・バレロ・メレは『ルチャ・リブレ』、『エル・アルコン』誌の編集長で、私のメキシコの師匠格。そんなこともあるが、クリスチャンの一家にとっても、私たちにとっても悲しいニュースだったのが、21日のビジャノ3号(アルトゥーロ・ディアス・メンドーサ)の訃報だ。

 昨年8月、メキシコへ行った時に『トリプレマニア25』の巨大すぎるアレナ・シウダ・デ・メヒコの駐車場で擦れ違いになった。アルトゥーロは息子のトライアウトを観戦してきていたのだ。午前1時過ぎ、関係者出入口で「さっきまでそこにビジャノ3号がいましたよ」と言われて、「ええっ!」と探した。「アルトゥーロ!」と叫んだけど、会えなかった…。あれが悔やまれる。クリスチャンに聞くと、その後、アルトゥーロは体調を崩したという。でも、亡くなるほど悪くなっているとは…。脳梗塞だったらしい。


※弟の4号、5号が兄の棺を運んだ。

 ビジャノ3号とはよく食事に行って、いろんな話をよくした。車で会場に行く途中では缶ビールを開けて「飲め、飲め」と勧められた。父メンドーサはもちろんだが、そのライバルだったソリタリオを崇拝していた。「俺は父親の仇に惚れた。若い時から、ああいうルチャドールになりたかったんだよ」と言い続けていた。それがロス・カバジェロス(アニバルを含む)でソリと合体できた時には「夢みたいだ」って言っていた。

 ビジャノ3号という選手は、おそらく日本人が想像する以上にメキシコでの評価が高いエストレージャである。流血ファイトに強く、感情を表に出すカリエンテ(ホット)なファイター。異常なカリスマ性と無鉄砲さはテリー・ファンクのような感じか。それはまた父レイ・メンドーサに通じるものがあった。メンドーサは表情で訴えるファイターだったが、ビジャノはマスクをしていても表情で勝負できる選手だった。それが多くのメキシコ人の心を打ち、万人に愛されたのだ。

 最後に会ったのは2006年アレナ・ソチミルコの控室だったか。「なあ、トマス。そこにいるのは、あのアンヘル・ブランコの本当の息子だぞ」。「えっ、本当に!」。「そうさ、コイツの親父があのランチェロ・バルガス(アンヘルの前身)なのさ(笑)」。

 アルトゥーロは私の好物をよく知っている。紹介されたイホ・デ・アンヘル・ブランコはあのアンヘルの実子だった。全日本やUWFに来たアンヘル・ブランコ・ジュニアはアンヘルの娘婿(レイ・サロモンの転身)で、血の繋がりはない。

 メンドーサとアンヘルは68年にNWA世界ライトヘビー級王座を奪い奪われの抗争をした仲で、UWA初期には共闘してコンビを作った。私が初めてUWAの試合を観たのが同じソチミルコ。その時のメインがソリタリオ&アンヘルvsメンドーサ&ワグナーだったように記憶する。アンヘルがルードになっていたからだ。イホ・デ・アンヘル・ブランコはアルトゥーロの前では直立不動でフリーズしていた…。「俺も最初にソリタリオに会った時はこうだったよ(笑)」。全面をくしゃくしゃにして笑う顔が父メンドーサそっくりだった。


※亡きビジャノ3号の紫ベルトも出展される。

 EXPOにはクリスチャンがビジャノの遺品のコーナーを作るらしい。そこにはクリスチャンが昨年亡くなった父親から少年時代に買ってもらったというビジャノ3号オリジナルのUWA世界ウェルター級のベルトも展示される。このベルトが世界的なプロレスコレクターになる切っ掛けの品だったらしい。そんなクリスチャン少年が後年、ビジャノ3号の姪と結婚するわけだから、人生とは分からないものだ。

 みんながメンドーサとアルトゥーロのことが好きだった。ビジャノスは1〜3号、ブラソスは長男、次男、四男までが天に召されてしまったのか…。天国で3vs3のマスカラ戦ができるなあ。今度勝つのはどっちだ!? 改めて偉大なるルチャドール、ビジャノ・デルセーロ=アルトゥーロの冥福を祈ることにしよう。

 しんみりしていたら、スマホが鳴る。「キム・ドク」の名前が浮かぶ。どうせ、「マスターズの俺の受け身はどうだった?すごかっただろ」って自慢だろうと思ったら、訃報だった。「李王杓(イ・ワンピョ)が今日死んだよ」。聞けば今朝(4日)9時40分にソウルのアサン病院ですい臓がんのために亡くなったという。李に関して私個人との接点は何一つないが、GスピリッツVol.44の小泉悦次氏のレポートで改めて勉強させてもらったばかりなのに…。

「俺がミネアポリスに居た時に一度76年に韓国で試合したでしょ。あのツアーでアイツにプロレスを教えたのが俺だよ。それまで大木さんの下から二番目の弟子が教えていたけど、技とかわからないからさ。アイツは後に大木さんの後継者になったけど…。俺とは石川さんの団体(東京プロレス)で組んだかな。その後にアイツがプロモーターで韓国に呼ばれて行って、ひどい目に遭った。俺、乞食になって日本に帰ってきたんだからさ。なぜか、聞きたい? 教えないよ(苦笑)。そんな奴が死んだって、俺はどうってことないけど、一応、報告だけしておきますよ」と言って電話が切れる。相変わらずの御仁だ…。戸口さんとの関係はどうであれ、ここは李のご冥福をお祈りしておきたい。韓国プロレスの主脈が途切れたという後味だけが残った…。

 さて、先週お約束した。次回のトークショーに日程が決まった。10月6日(土)のお昼からと決定!熱いうちに次の鉄を打ちます。なお、来週と再来週はメキシコ。現地の仕事がたくさん詰まっているため、このコラムを送れるかは未定。「もしかしたら」と、期待しないで待っててください。

『ビバ・ラ・ルチャVol. 38  嗚呼、愛しのゴング創刊50周年秘話Part2 〜竹内学校 鉄の掟〜』
■日時 2018年10月6日(土) 開場12:30 開始13:00
■会場 新宿・ネイキッドロフト(東京都新宿区百人町1−5−1 百人町ビル1F)
■チケット 3000円(当日3500円)※飲食費別
■出演   “ドクトル・ルチャ”清水 勉
■司会進行 パニコXX
■電話予約 ネイキッドロフト03−3205−1556(16:30〜24:00)






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