[水]ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

[9.20]“日本の聖者”の実像

 先週の金曜日、南落合長崎にある洋食レストラン「香港」で力道山夫人田中敬子さんを囲む会があったのでお邪魔した。以前にもここで触れたが、「香港」の高梨正信オーナーシェフはリキパレスレストランの力道山お抱えシェフだった方。そこに敬子さんを招いての会が模様されたというわけ。仕掛け人は東スポの名カメラマンだった鈴木皓三さんと大塚直樹さんだった。藤波さん、北沢さん、新間さん、業界の先輩たちが顔を見せて楽しい大人の宴となった。私も敬子さんと楽しく語らせてもらう時間をいただいた。まことにありがたいひと時だった。


※力道山の敬子夫人と満面の笑みでツーショット。

 私が先日、メキシコで昔の資料を前にして調べものをしている時、力道山に関しての記事をいくつか発見した。当初、力道山が亡くなった1963年12月とその直後の雑誌を見たが、残念ながらそういう記事はみつからなかった。やっと見つけたのは66年11月13日発行の『ルチャ・リブレ』誌160号のカラー口絵。といってもモノクロに人着(人工着色)した写真だった。そこには「RIKI DOZAR」(字面だけならリキ・ドサールと発音するのかなあ?)、さらに「ハワイ」とある。これだと力道山はハワイの人…という認識だ。

 どこで手に入れたのか、この写真は化粧回しをしているが、髷はないし、体形もプロレスラーになってからのものだ。この10年前に木村政彦、清美川らがメキシコに渡り、61年にはヒロ・マツダ(スイロ・コヒマ)もペルーからメキシコに流れてきたが、彼らは力道山に反目した人。ミシマ・オオタ、アキオ・ヨシハラらは日本マットを知らずに彼の地でプロレスラーになった者。力道山を主脈とする日本マットの情報がメキシコにしっかり伝わらないのは仕方ない話といえる。


※1966年の「ルチャ・リブレ」誌の口絵となった力道山。

 だからと言って、当時の『ルチャ・リブレ』誌が海外情報の疎かったわけではない。ことアメリカマットの各テリトリーの情報と歴史に関しては60年代の日本の専門誌よりも詳しかった。隣国のアメリカからの資料や情報収集が大事だと捉えていたからであろう。しかし、太平洋を越えたオリエンタルの情報に関しては全くの「未知」だったのである。やっと国交が結ばれて70年1月にミステル・コマ(駒厚秀)、ヤマモト(星野勘太郎)が来墨して、初めて「自分らのマエストロは力道山です」と正史が語られた。

 72年にチバタ(柴田勝久)とキタサワ(北沢幹之)が新日本旗揚げに参加するためにメキシコを去った後、EMLLは引き続き、日本プロレスに選手派遣を要請している。72年5月12日発行の『ボクス・イ・ルチャ』誌1021号にはミツ・ヒライがメキシコへやって来ると報じている。しかし、内乱が続く日本からヒライがメキシコに来ることはなかった。

 73年3月にヤマモト(星野)とハヤチ(林牛之助)が崩壊寸前の日本プロレスからEMLLに遠征した。彼らがEMLLへ行った力道山門下(日本プロレス)の最後の選手だった。その1年後、力道山の次男リキドーサン・セグンド(2号=百田光雄)がメキシコ入りするが、それは全日本からの出向であった。アレナ・メヒコデビューは3月8日で、レイ・メンドーサと組んでワンナイトトーナメントに出てレネ・グアハルド&カルロフ・ラガルデと対戦(いきなりメンドーサと仲間割れして翌週からルードに)。この時期になると光雄さんの口から父力道山の偉大さがメキシコに伝わったようだ。


※1976年の『ボクス・テ・ルチャ』誌の力道山の記事。

 『ボクス・テ・ルチャ』誌の「エンシクロペディア(百科事典)・デ・ボクス・イ・ルチャ」なる連載記事はメキシコのレジェンドだけでなく、ルー・テーズやバーン・ガニアなど米国の名レスラーたちの武勇伝を記したもの。そこに力道山が登場したのは76年6月25日発行『ボクス・イ・ルチャ』誌1236号。タイトルは「エル・ティグレ・デル・ソル・ナシエンテ」(陽いづる国の虎)。やはりこの写真も同じ虎の化粧回しをしたカット。日本選手権のベルトも脇にある。

 ここには力道山の出自や相撲時代の詳しい説明、師匠格のホビー・ブランズとの出会いやハワイのプロモーター、アル・カラシックとの接点など、かなり詳細に書かれていた。死して13年目にしてやっとメキシコで“日本の聖者”の実像が浮き彫りになったといえよう。それでもなお彼らにとってハポンは未知なる国であり続けた。逆に言えば76年の時点で我々はデビューからすでに30数年も経っていたエル・サントをどれほど理解していたというのだ。それどころか日本のマスコミもまたメキシコマットの実態を掴めず、ルチャ・リブレの意味さえ知らずに未知の覆面王国のまま取り残されていたのである…。


“ドクトル・ルチャのビバ・ラ・ルチャVOL.34”
『あのプロレス8ミリ大会よ、再び! 〜秘蔵映像鑑賞会〜』第2弾
PELICULA DE SECRETO

 昨年秋に大好評をいただいたプロレス秘蔵・未公開映像大会。その第2弾を今年もやります。題して『ペリクラ・デ・セクレト』(秘密動画)。これは今から40年前にマニアックス主催で数十回行われた「プロレス8ミリ大会」の復刻企画。YouTubeを探しても決して出てこない日本マット、米国マット、メキシコマットの試合、関連マル秘映像を集めました。みんなでワイワイ言いながら古き良き時代の貴重映像を見ましょう。

■日時:10月8日(日)開場12:30 開始13:00
■場所:新宿・ネイキッドロフト(東京都新宿区百人町1−5−1 百人町ビル1F)
■料金:予約3000円、当日3500円(飲食代別)
■出演:ドクトル・ルチャ(清水勉)
■MC:パニコXX
■電話予約:ネイキッドロフト03−3205−1556(16:30〜24:00)






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