第81回 他分野

 このコラムだけを読んでいると気付かれないかもしれないが、実は現在、僕の仕事の比重は完全にプロレス以外に置かれている。割合で言うと、プロレス:それ以外=2:8ぐらいの状態だ。それ以外の仕事は主に芸能関係。プロレス界とは本当に縁遠くなってきてしまった。
 だが、ひとたび外の世界に触れるようになると、新鮮なのも確かだ。例えば、よく使われる“プロ意識”なんて言葉があるが、プロレス界だけで考えてしまうと、物凄く狭い定義になってしまう。他の分野で例えるとしても、せいぜい総合格闘技ぐらいなもので、世の中全体と見比べても、薄っぺらい意味になってしまうのだ。最近、取材の席でプロ麻雀士の話を聞くことができたが、その人が語るプロ意識や勝負に対する感覚はとても興味深いものだった。ハッキリ言って、プロレスラーを取材していて、そんな風に感じることは滅多にない。
 当たり前の話だし、決して悪いことではないのだが、この業界は完全にプロレス的考えに染まっている。以前ならとても刺激的に感じられた鈴木みのるの言葉が、最近はどうしても薄っぺらく、作られたものに感じてしまう。鈴木の意見には頷ける部分も大いにあるが、年々プロレス色が強まっているような気がしてならないのだ。そこにはこちら側の慣れや飽きも影響しているのだろうが、鈴木が思っている以上に個性が薄まっているのも事実だと思う。
 これはファンにも言える。あまりいい言い方ではないかもしれないが、プロレスを意固地になって見続けているファンは、今こそ別の分野に目を向けてもらいたい。もちろん近い分野でもいい。「総合格闘技はつまらない」「ボクシングはよく分からない」なんてガチガチになった気持ちは一旦捨てて、いきなり会場で生観戦をしたら感じるものがあるかもしれない。プロレスの見方だって変わるし、問題点も見えてくるはずだ。
 反対の場合も当てはまる。今はほとんどプロレスを見なくなった人は、あえて複数のプロレス団体を観戦してみるのはどうだろう。食わず嫌いなだけで、案外自分好みのプロレスとぶつかる可能性も高いと思う。
 マット界に限定してもこれだけ考えられるのだから、他の業界まで視野を広げたら、さらにいろんな発想が生まれるし、いろんな問題点が見つかる。ドンドンとプロレス界が縮小し、マニア向けになってきている今だからこそ、ファンを含めたプロレス界全体で、他の業界からヒントを見つけ、起爆剤にしていくべきではないだろうか。レスラーたちもいろんな人間の感性に触れて、今一度、自分たちのアイデンティティやイデオロギーを万人に伝わる確固たるものにしてほしい。そういう前提がなければ、新たにファンを獲得したり、以前のような隆盛を築くようなことはできないだろう。




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