第40回 初めて企画を担当しました。

 現在、『Gスピリッツvol.7』(6月18日発売)制作の真っ直中。ほぼ原稿も出揃い、やっと本の全体像が見えてきた。まだ表紙や特集、インタビューに登場する選手などは発表されていないので、ここでは詳しい内容には触れないが、これまでとはまた違った切り口の一冊に仕上がったと思う。僕自身もGスピリッツとしては初めてちゃんとした企画を担当させてもらった。この内容や取材で感じたことについては来週以降にこのコーナーで書きたい。
『Gスピリッツ』という雑誌のプロジェクトが始動してはや1年。長いようで短かったこの1年間で僕のプロレスに対するスタンスは大きく変化した。どう変わったかを一言で表すのは難しいが、深みというか、客観的な視点がかなり身についたのではないかと考えている。このコラムでも、以前に比べ批判的な文章を書くことが増えてきているが、逆の立場から見た考え方などを踏まえて、プロレスについて考えられるようになってきた。
 考え方に幅が出てきたのは、清水編集長や佐々木副編集長、小佐野記者といった自分よりキャリアのある人たちと話す機会が増えたことが一番影響していると思う。とにかくGスピリッツ編集部はプロレスに関するディベートが巻き起こることが多い。新聞や専門誌の記事1つからああだこうだと意見を言い合うことが日常茶飯事だ。しかも、そこにはプロレス業界の現状に対するシビアな危機感があるわけで、昔の話になったとしても、単純に懐古主義に浸るのではなく、“こういう部分が良かった”と具体的な話に進展する。そういう中で、自分のプロレス観を深く追求したり、これまで見てきたものを再検証することが必然的に増えてきた気がする。例えば、僕が担当している日曜日の四天王コラムに関しても、当初は「凄い」「素晴らしい」「面白い」と連呼するようなコラムにしようと自分でも考えていたが、最近は功罪を分析したり、時代背景などを掘り下げようと思うようになってきた。
 ある意味、プロレス記者として僕はとても恵まれた位置にいる。取材したい人や試合だけに集中することができるし、週刊誌のように日々起こっている事件やタイトル争いを追いかける必要もなく、ひとつひとつ噛みしめながら記事を作ることができる。「先日のタイトルマッチの件ですが…」とか「シリーズ最終戦で○○選手と戦いますが…」なんてことを聞く必要はなく、その選手自身の内面や考え方と真っ向から向き合うことができる。書き手としてはモチベーションが高くなるし、いろんな方法論も生まれてくる。情報を詰め込むわけではないのだから、シビアな評価もされるわけで、記者としての技量も試されることになるから、ステップアップにはもってこいだ。
 もちろん日々の事件を追うことは大事なことだ。しかし、それを雑誌でやるのは限界があるというのは、携帯サイトから記者になった僕としては当然の感覚。もしかすると、現時点まで週刊ゴングが存続していたとすれば、その誌面で僕が記事を書くようなことがあったかもしれないが、かなり中途半端な感覚になってしまい、自分として手応えを感じることができず、今頃はプロレス記者という職業に絶望していたかもしれない(現実的に言えば僕はプロレス記者ではなく、プロレス兼アイドル兼お笑いライターみたいになってきているが……)。全国を飛び回るような携帯サイトの記者に戻りたいという願望は少なからず自分の中に今もあるけれど、週刊ゴングの記者になりたいという気持ちはまったくなくなったというのが、今の素直な気持ちだ。
 このコラムを書き始める前に、改めて今回Gスピリッツの誌面用に自分が書いた記事を読み直してみた。正直な気持ちを言うと、自分の中で納得できる文章が書けたとは思えない。及第点は出せるけれど、未だに取材した選手の気持ちをちゃんと言葉として刻むことができたのかと自問自答してしまう部分がある。
 このコラムで何度も書いてきた今現在の目標――自分で納得のできる文章を書くということにはまだまだほど遠い。ただ、プロレス以外の分野も含めて、取材したいと思える人に話を聞ける環境が整ってきたことは大きな意味を持っている。とにかく自分の気持ちをぶつけて、いろんな人の話を聞き、その人の感じたことや感情をしっかりと文章に落とし込みながら、自分の可能性を探っていこうと思っている。(ちなみに今、一番取材したいレスラーはモハメド ヨネです)




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