視線の先に 第四章

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「教官には叱られたけど、目撃してたほかの奴らがさ、もう俺のことを尊敬の眼差しで見てるわけよ。

教習が終わったら、取りかこまれた。

免許がとれたら、ツーリングのクラブをつくろうって話になった」


「女の子もいるんだろう」

「まあな。幾人かと携帯の番号をさ──」

「ふうん。避妊だけはちゃんとしろよ」

「──バカオヤジ」


敷地の前面を整地して、大きな8の字のコースを設えた。

多摩川河川敷のモトクロスコースの脇にあったものと同様で、ある程度スピードを乗せられるようになっている。

まずは私が走ってみせる。

未舗装の8の字走行は滑りやすい路面で左右に切り返すことから、舗装路のコーナーをタイヤのグリップにまかせて走りまわるよりもはるかに巧くなる。

博幸が喰いいるように見つめている。

まさに真剣に学んでいる、といった風情である。

8の字を切り返して博幸のほうを車体がむいたときに私がゴーグルの奥から見据えると、博幸も見つめかえしてくる。

徐々に速度をあげていくと、後輪が流れはじめる。

力まずに逆ハンで修正する。

カウンターをあてる角度がたいしたものではないので、博幸は私が逆ハンで立ちあがっていることに気付いていない。

それでも、さらに速度があがると、右に曲がっているのに左にハンドルを切っているという状態が目視できるようになってきて、博幸は思わず立ちあがり、間近までやってきて凝視しはじめた。

走行を終えてもどると、博幸は私の傍(かたわ)らでライディングフォームをとり、中空の見えないハンドルを握ってカウンターをあてる仕種をした。


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