
視線の先に 第一章
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反射的に、ブレーキを踏む。
アンチロックが効いて、振動が足裏に伝わる。
急減速に、助手席の妻が体勢を乱す。
かろうじて、止まれた。
二列めに博幸(ひろゆき)を、さらに三列めのシートを倒して大量の荷物を積んでいるのだ。
よく止まれたものだ。重量からすると、上出来だ。安堵の息をつく。
情況を飲みこめない淑子(よしこ)が訊いてきた。
「どうしたんですか」
私は答えるかわりにハザードを点滅させ、後続に合図する。
料金所の係員が駆けよってきた。いまごろになって掌の汗を意識した。
「調布の料金所では、問題なく通行できたのですが」
「そうですか。申し訳ありませんが、いまいちどカードを確認していただけますか」
「──問題ないですね」
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