視線の先に 第二章
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「うん。DT125というオートバイをすすめられた。納得できなかった」
「なぜ」
「中型だろう。400tまで乗れるんだ。
なんで125に乗らなければならないのか」
「どうせなら大きいのに乗りたいわよね」
「ああ。でも、懇々と諭された。DTならオートバイの基礎をとことんものにできるし、高速道路は走れないが、ツーリングにも不自由しない、と」
「納得したの?」
「した。不承不承だったが、DTを買えば、モトクロスを教えてやると言われたし」
DTが納車されたとき、彼から囁かれた。
お父さんがお金を払ってくれるならば、400tの高価なオートバイを買うのもいいが、自分で買うのだから身の丈にあったものにしておけと。
ローンの支払いにあくせくするよりも、そのお金をツーリングにまわしたほうがいいと。
瞬発力があって、しかも脚がよくて車重が軽いDTで鍛えておけば、どんなオートバイに乗っても巧く走らせることができるようになる、と。
「いまでも暗誦できる。
空飛ぶサスペンションと呼ばれたモノクロスサスが装備されたモデルで排気量123t、13馬力7000回転、トルクは1.3キロ6500回転、ミッションは6速で車重は97キロ」
列挙する私に呆れたのだろう、妻が失笑気味の笑い声をあげた。
私はかまわず続けた。
「フォー・ストロークのライバルよりも15キロほども軽くて、この15キロの車重の差が、いろいろなチャレンジを可能にしてくれたんだ。
国際A級の彼と河川敷のコースを走り、まがりなりにもジャンプをこなし、カウンターをあてられるようにもなった」
「よかったわね」
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