
視線の先に 第二章
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「ああ。しかも、たくさん旅をした。野宿旅だ。
ツーリングは、苦しくて、愉しくて、やめられなかった」
「苦しくて愉しいのか」
「そうだ。愉しいだけなんて、すぐに飽きるさ」
「そういうことを博幸に教えてあげてほしいな」
「簡単に言うが、それはもっとも難しい。それは教育の極致じゃないか」
「オートバイを買いなさいよ」
「買いなさいよって、ここのローンもあるんだし」
ベッドのスプリングが幽かに軋み、妻が上体をおこす気配が伝わった。
「何千万円もするものじゃないでしょう。
それに不自由になるために野辺山に別荘を建てたわけではないし。
博幸にもオートバイを教えてあげて。あなたが国際A級の人に教わったように」
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