視線の先に 第三章

前へ 2/7 次へ

裏道ばかりをつないで、西武線小平(こだいら)駅の踏切の遮断機の前で思案する。

慣らしである。

エンジン回転をあげたくない。

交通量が多くて流れの速い新青梅(しんおうめ)街道は走りたくない。

けれど、このあたりまでくると裏道もあやふやだ。

ナビに頼りきりの四輪では、これほどまで頭を遣うことはないと苦笑しつつ、脳裏のおぼろげな地図を組み合わせて、ルートをつくりあげた。

迷ったかと思ったが、なんとなく国道16号線を横切っていた。

ずいぶん久しぶりであるが、飯能(はんのう)市街も迷わずに抜けた。

天覧山(てんらんざん)入り口の表示を見あげて、ニヤリとする。

もう迷いようがない。

国道299号線をひた走るだけである。

忘却の彼方であると思っていても、どうやら躯のほうが地理を覚えているようだ。

ペースの速い車の邪魔をせぬように気を配り、連続するカーブを抜けていく。

正丸(しょうまる)トンネルが近づいた。

そういえば青梅市街から成木(なるき)街道にはいり、名栗(なぐり)湖の脇を抜けて山伏(やまぶし)峠、そしてかの正丸峠と無数のコーナーを切りとって、正丸トンネルに至るルートもあった。

桜の季節に走ると、ときどき花吹雪につつみこまれたものだ。

トンネルにはいる前にトリップメーターの数字を頭に刻む。

トンネルをでた瞬間の数字からそれを引くと、どうやら正丸トンネルの長さは2キロ弱といったところだ。

それからたいして時間もたたぬうちに秩父(ちちぶ)市街を抜けた。

コンビニで弁当とペットボトルのお茶を買った。


前へ 2/7 次へ


第一章
第二章
第三章
第四章


ウェブライブラリーに戻る


[0]ヤマハ発動機トップへ戻る

ヤマハ発動機(株)
Copyright(C)
Yamaha Motor Co., Ltd.